バーチャルリアリティ(VR=仮想現実)が、とても身近なものになろうとしている。イノベーションを起こしたのは、理化学研究所発のベンチャー企業・ハコスコ。CEOである藤井直敬氏は、2008年から同研究所センター適応知性研究チーム・チームリーダーとして、適応知性および社会的脳機能解明をテーマに研究している脳科学者だ。
ハコスコの何がスゴイかというと、圧倒的な価格競争力につきる。近年、話題になっているヘッドマウントディスプレイ・オキュラスリフトは約4万1300円(350㌦、1㌦=118円)だが、ハコスコは単体で1000円。雑誌の付録としてついていることもある。
価格の秘密は、再生装置という高価なハードを個人のスマホで代替したことにある。材料は段ボールとレンズだけで、コンテンツとなる360度の映像は専用のアプリで再生するのだ。こうすることでVR体験の敷居を下げ、誰もが手の届くものにした。体験するだけでなく、自分でコンテンツをアップできる仕組みも整えてある。
「見る」よりも「体験する」という感覚
実際に試してわかるのは、ハコスコは「見る」のではなく「体験する」という感覚に近いことだ。取材時のハコスコ体験をしばらくたってから思い返すと、脳からは「映像を見た」よりも、「その場にいた」という信号が送られている気がしてくる。もちろん、実体験よりは薄い信号ではある。朝起きた時にうっすら覚えている夢のような。それでも、ハコスコの体験は、映像と実体験の間にあった。
そもそも脳科学者である藤井氏が研究のために開発したのはSR(サブスティテューショナルリアリティ=代替現実)システムだった。これは「現実と仮想空間の境目をなくすことで、体験者はいつ現実から仮想空間に行ったのかわからない。そういうことを可能にした」(藤井氏)世界で初めての技術だ。
これはハコスコと違い、テクノロジーの詰まったハードと一定の空間を必要とする。圧倒的な没入感により、現実空間と代替空間が入り混じる体験は想像を絶するものだった。
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