二人の日本人が「イスラム国」のテロリストによって惨殺されたことで、日本の憲法や国の形をめぐる議論が加速される気配である。首相およびその周辺の右派メディアからは、「テロとの戦い」をテコに、憲法9条の制約を取り払い、自衛隊が海外で武力行使を含む幅広い活動ができるようにすべきという声が出ている。大きなショックで国民感情が激しているときに国の針路を大きく変更することは、立憲主義、民主主義の破壊につながる。一連の事件に対する政府の対応を検証し、テロの拡大を防ぐため、さらに日本の自由や民主主義という価値を守るため、何をなすべきか、熟慮すべき時である。
テロリストが人質の存在を公表し、身代金を要求したとき、安倍晋三首相は人質を助けるためにあらゆる手段を取ると言った一方、テロには断固屈しないとも強調した。一国の指導者としては、表向きにはこれ以外に言いようはないであろう。しかし、人質の生還とテロに屈しないという二つの命題は矛盾することを、首相はどこまで理解していたのか。人質の生還を優先してテロリストと交渉し、何らかの見返りを与えるなら、テロという手法を容認したことになる。逆に、テロリストの存在を絶対に認めないという態度を取るなら、その大義のために人質が犠牲になっても仕方ないという結論に到達する。
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