「外務省はこれまでもわがほうと外事事案に関して情報を共有しないことがよくあった」──。警察庁幹部の言葉である。
日本人人質・殺害脅迫事件は発生から12日を経た2月1日早朝、フリージャーナリストの後藤健二氏がイスラム過激派「イスラム国」(ISIL)によって殺害されるという最悪の結末となった。
警察庁幹部が筆者に語った「情報共有」について言及する前に、これまでの経緯を振り返ってみたい。
昨年8月16日 湯川遥菜氏がシリア北部で拘束されたことが判明。政府は首相官邸に情報連絡室、外務省に対策室、ヨルダンに現地対策本部を設置。
10月25日 後藤氏がシリアで消息不明になり、政府は11月1日に同氏の事案も追加した。
11月28日 政府は安倍晋三首相の中東4カ国・地域訪問の日程(2015年1月16~21日)を確定(非公表)。
12月3日 後藤氏夫人のもとにイスラム国から身代金10億円要求の脅迫メールが届く。
12月19日 外務省が安倍首相に中東歴訪に関する第1回のブリーフィング(以後、1月6日、9日、15日午前と午後と、トータルで5回)。
12月23日 朝日新聞が安倍首相歴訪の日程を初めて報道。翌日以降、各紙も詳細を報じる。
今年1月16日午前 安倍首相が政府専用機で中東歴訪に出発。
1月20日午後2時50分 イスラエル滞在中の安倍首相に外務省から事件発生の第一報。同3時、邦人拘束事案に関する官邸対策室、外務省緊急対策本部を設置。同3時15分、安倍首相は同行した中山泰秀外務副大臣をヨルダンに派遣、首都アンマンの日本大使館に現地対策本部設置を指示。同4時30分、菅義偉官房長官が記者会見。同5時30分、麻生太郎首相臨時代理主催の関係閣僚会議開催。同11時30分、中山副大臣がヨルダン王宮府国王室長に面会。ほぼ同時刻、安倍首相がアブドラ国王に電話して支援を求める。
1月21日未明 安倍首相はトルコのエルドアン大統領、エジプトのエルシーシ大統領と相次いで電話会談。同日夜、中山副大臣がアブドラ国王と会談し、正式に協力要請。
1月24日午後11時20分 殺害されたとみられる湯川氏の遺体写真を手にする後藤氏の画像が公開される。
1月27日午後11時ごろ 後藤氏とみられる音声メッセージで、24時間以内に後藤氏と女性死刑囚の1対1の交換を要求、実行しなければヨルダン空軍パイロットを殺害すると警告。
1月29日午前8時ごろ 同じく音声メッセージで同日日没までに女性死刑囚をトルコ国境まで移送しなければ、パイロットは殺害されると語る。
1月31日夕 膠着状態が続く中、菅官房長官が加藤勝信、世耕弘成、杉田和博3副長官、谷内正太郎国家安全保障局長、西村泰彦内閣危機管理監らと情報集約会議。その後、安倍首相に報告。
2月1日午前5時ごろ 後藤氏が殺害される映像が公開される。
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