大阪環状線に新車両が導入される本当の理由 満を持して2016年度に「323系」がデビュー

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現在、大阪環状線を走る「103系」

では、通勤路線で新型車両に次々と導入しているJR東日本との戦略の違いはなぜ生じるのか。その理由は、両社の財務体質に求められる。

2013年度の営業キャッシュフローはJR東日本が5627億円、JR西日本が2377億円(いずれも連結ベース、以下同)。JR東日本のほうが売上規模で勝っているが、売上高に対する営業キャッシュフローの割合でもJR東日本が20.8%、JR西日本が17.8%となっている。つまり、JR東日本のほうが効率よくキャッシュを稼いでいるといえる。

両社とも設備投資は増資や借り入れに頼っておらず、営業キャッシュフローの範囲内に収まっている。2014年度の設備投資予定額はJR東日本が5550億円、JR西日本が2240億円である。つまり、JR西日本の設備投資額はJR東日本の半分以下ということになる。

「環状線改造プロジェクト」の目玉

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「103系」とともに現在の主力である「201系」

JR西日本は、私鉄との競合が厳しい路線では最新型の車両を導入して対抗しているが、JR東日本に比べて少ない設備投資費用を有効に使うため、環状線は後回しになってしまった感がある。古い車両は保守コストがかさむが、そこには目をつぶってきたわけだ。

ここへきてJR西日本が新型車両導入に踏み切った理由はまさに、環状線に設備投資の順番が回ってきたということに尽きる。現在、JR西日本は「大阪環状線改造プロジェクト」を展開している。森ノ宮駅の改良、玉造駅周辺開発、さらには、各駅のトイレ改良や駅ごとに異なる発車メロディの導入、高架下の美化促進といった施策も打ち出している。新型車両の導入は、このプロジェクトの目玉ともいえる施策である。

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