国債累増、問題の本質をごまかしてはならない 返済時に誰がどれだけ負担するのかがが問題

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だが、この状況を多くの人がどう解釈しているかということが問題だ。例えば国債残高が100兆円増えたけれども、100兆円の金融資産と100兆円の負債が同時に増えているのだから、差し引きすると純資産は前と同額で、増えていない、と皆が考えているだろうか。

筆者は女房のヘソクリがいくらあるのかということを別にすれば、自分の保有している個人国債の額はもちろん金融資産の残高は大体把握している。しかし、政府の負債の中のどれだけが自分に帰属するのかはよく分からない。100兆円の国債が増えたときに、日本全体で見ると100兆円の金融資産の増加は認識される一方で、100兆円の負債の方は十分に認識されていないということが問題の本質だ。

国債の保有者と返済時の負担者は異なる!

2013年度末の国債発行残高は約750兆円で、日本の家計金融資産は合計で約1600兆円ある。750兆円の国債を金融資産でもあるが金融債務でもあると認識すれば、家計の金融資産は国の金融債務と相殺すると850兆円程度でしかなく、見かけの半分強しかないということになるが国民のすべてがこの事実を認識しているとはとても思えない。

各人が、自分が保有している国債と同額の返済義務がある、という訳ではないというところが問題だ。国債の保有者と、返済時に資金負担をする人とは同じ世帯の人ではないのだから、そもそも夫婦間の借金という比喩は適当ではない。

海外からお金を借りていなければ問題が起きないというものではなく、国内のお金の貸し借りでも大きな問題は起きうる。日本のバブル崩壊後、多くの金融機関が経営破たんした。だが、海外から資金を借りていたわけではなくて、ほとんどは国内の資金の貸し借りの問題だった。

当時も誰かに貸したお金が返ってこないという結果になっても、お金を貸した人の金融資産がなくなる一方でお金を借りた人の負債もなくなるので、国内の金融資産マイナス金融負債の差額は変わらなかった。しかしこの時お金を貸した人は、お金が返ってこないことを負担ではないとは考えていない。

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