リコール問題、タカタは何を間違えたのか 全米リコールめぐり深まる当局とのミゾ
これに対し、現段階では不具合の詳細な調査が済んでおらず、地域限定リコールを全米に拡大する必要性があるかどうかは判断できない――。これがタカタの主張である。
物理的な問題もある。タカタでは「各自動車メーカーが今後実施するあらゆるリコールにつき、必要な交換部品の増産を含めこれを全力でサポートする」と説明している。しかし現在、リコールに伴う交換部品の生産能力は現在月産35万個。14年に入ってからのリコールに必要とされる約600万個をすぐに賄うことはできない。年明けに生産能力を45万個へ拡大する計画だが、地域限定リコールを全米に拡大するとなれば、交換部品はまったく足りなくなる。
NHTSAの要請に応じて一気にリコールを広げるのではなく、危険性が認められる南部の多湿地域を優先し、調査を進めながら必要に応じて対応を拡大したほうが混乱を避けられる、というのがタカタの判断だろう。また、米国ではリコールを決めるのは自動車メーカーの責任ということも、タカタの動きが鈍い理由ではある。
ホンダの対応が”一変”
これまでは自動車メーカーもタカタの考えに賛同していた。ところが、状況が一変した。ホンダは3日の公聴会で、タカタ製の運転席エアバッグを搭載した車の地域限定リコールを全米に拡大すると表明したのだ。
現在、ホンダが行っている11州の地域限定リコールの対象は280万台だが、全米への拡大で600万台弱にまで膨らむ。これを受けて、トヨタ自動車や米クライスラー、独BMWなども追随すると見られる。加えて、日本ほか全世界でもリコールが拡大する可能性が高くなった。タカタは、今年度の中間期までにリコール絡みで476億円の特別損失を計上しているが、さらに100億円単位の損失が出るおそれも出てきた。