これまで紹介してきたスタートアップの中で、最もスタートアップらしからぬ組織が、粕川ゆきさんが主宰する「いか文庫」だ。
そもそも、組織とさえ呼べないかもしれない。何しろ、いか文庫は現状では法人化しておらず、しっかりした収益基盤もなく、スタッフに定期的な給与が発生するワケではない。手伝ってくれた人に支給されるのは、パンだという。
いか文庫の紹介の前に、まずはスタートアップという言葉を確認しておこう。今話題のピーター・ティール著の「ゼロ・トゥ・ワン」(NHK出版)の言葉を借りれば(脚注ですが)、スタートアップとは以下のように説明される。
「狭義には新しく起業したベンチャーの中でも特に、テクノロジーによるイノベーションによって新たなビジネスモデルを作り、ベンチャーキャピタルからの資金調達を元手に急成長を目指して、株式公開(IPO)や大企業による買収を狙うもの。」
いか文庫に当てはまる要素はひとつもない。しかし、それでも取り上げたくなる魅力が彼女たちにはある。
「すぐに動かないと、形にならない」
いか文庫が自らを称するときに使う言葉は「エア本屋」。ある時は書店の棚を自らのセンスでコーディネートし、POPを制作。また、ある時は本を楽しんでもらうような体験型のイベントを企画し、書店・古書店と連携して開催。10月には、クラウドファンディングで集めた資金をもとに、ミュージシャンらと渋谷で本と音楽のライブイベントを実現させた。
粕川さんは実際の書店員。粕川さんは自分たちの魅力を「よくわからないところ」だと語る。ファンたちに聞いてもそう答えるし、実際に取材してみてもよくわからない。しかし、粕川さんの言葉には、起業家に通じる要素がある。
「思いついたことはすぐに動き出さないと形にならない」という、その言葉の真意はどこにあるのだろうか。
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