船井電機が混迷、中で何が起きているのか 脱テレビ進まず、もがき苦しむ
結局、フィリップスは音響機器をギターの名門、米ギブソンに売却。船井はパイオニアからの同事業買収が一部で報じられたが、「話は来たが、交渉はしていない」(同社)という。業界では「フィリップスの買収がなくなり、穴を埋めようとパイオニアの音響機器を買おうとしたのでは」(他社幹部)との声も聞かれる。
ほかにも中国でLED照明に参入後、競争激化で撤退するなど試行錯誤が続いている。一方テレビでは、2014年度内に三洋電機の北米事業を承継予定。設備取得はせず、ブランドライセンス契約を結びウォルマート向けに販売する考えだ。船井の前田哲宏代表取締役執行役員は「大型サイズの商品群があり強みになる」と語る。
87歳の創業者が復帰
ただ、テレビ、プリンタとも需要減や価格競争を考えると、大きな成長は見込みづらい。そこで狙うのが冒頭の医療事業。ベンチャーと提携し、歯科用CT診断装置などの開発を狙っている。
次の柱探しに奔走する船井にとって、実はこれより深刻な課題がある。誰が今後の成長戦略を担うかだ。上村氏が退き、林社長が急きょ再登板したが、加えて注目された人事は、創業者である船井哲良会長が代表権を取り戻したことだった。前田代表取締役は、「会長は経営の不安定さをなくす重しの役割。日常業務は林と私を中心に進める」というが、87歳の創業者の“復帰”はカリスマへの依存度の高さを物語る。再成長に向けたハードルは高そうだ。
(「週刊東洋経済」2014年11月29日号<25日発売>の「核心リポート03」を転載)
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