新幹線札幌延伸で気がかり「並行在来線」の大問題 30年度末開業だが、いまだ方針が決まらない

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また、既存の事業者が承諾でき、そして同等の支援となる制度でなければ不満が噴出する。

並行在来線の第三セクター会社に支払われている貨物調整金は、現在建設中の整備新幹線が全線開業する2030年度までに新制度に移行する申し合わせがなされているし、JR貨物とJR旅客各社の間にアボイダブルコストルールが横たわる限り、国としての目標でもあるJR貨物の上場を旅客会社は認め難いだろう。それらを合わせた総合的な制度が必要とされている。

船舶代替案の是非

物流の話を聞き集める中では、船というアイデアも根強かった。一時期、国土交通省内でも検討されたが、港と発着地との間の陸上輸送がトラックおよびそのドライバーの確保が大問題として沙汰止みになってしまった。

だが、道内および本州以南の輸送は現状どおりの鉄道輸送とし、港ではコンテナを1つずつ積み替えるのではなくコンテナ列車をそのまま船に積載する。さらに往時の青函連絡船のような小さな船ではなく、コンテナ列車数本を積載する大型船とする案はいかがか。船の性能も向上しているので、荒天時の欠航率は以前と異なり、速達性もあながち劣るとも言えないのではないか。

この船ルートのメリットとしては、北海道新幹線の青函トンネル共用走行区間を新幹線専用にすることができ、新幹線電車を所期の目標どおり時速260km運転として本州―北海道間の速達化が前進することがある。室蘭や苫小牧であれば線路は港の近くまで達している。苫小牧は現在、フェリーが発着している西港に対して東港は市街から少々距離があるため遊休化している。現状はローカル線に過ぎないが、鵡川まで残された日高本線が使える。このインフラの活用にもつながってゆく。

貨物列車との線路共用区間を走る「はやぶさ」 。通常の速度は時速160kmに抑制されるが、貨物が激減する時期は時速210km運転が行われる(木古内ー湯の里尻内信号場間) (2021年1月1日、写真:久保田 敦)

新幹線については最近のコロナ禍による旅客減の中で物品輸送が活発化しているが、本格的な貨物輸送に活かす方向も考えられていることだろう。パレットを旅客電車スタイルの荷物電車に積む方式ならば、旅客列車のダイヤに組み込んでゆけるし、巨大インフラながら十分に活用できているとは言い難い北海道新幹線の力を活かせる。現在は旅客会社による事業だが、JR貨物を参入させて急送品輸送は新幹線とすれば、貨物輸送として商品の幅が広がる。

だがデメリットとしては、道南いさりび鉄道は貨物による線路使用料収入がなくなり、旅客一本ではとても立ち行かなくなる。本州側の船の発着地によっては青い森鉄道やIGRいわて銀河鉄道も同様であり、本州内を貫く動脈をどのように考えるか、それだけで国政レベルの交通問題に値する。そして、航送船ならばその船も複数建造しなければならず、道内輸送をどのような形態にするにしても、港湾や物流施設の見直しは不可欠だ。

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