(第56回)採用活動の舞台がWebから大学キャンパスへと変貌の予感

●大学を舞台にする採用活動へと大きく変貌

 次は「活動」だ。
 「キャリアセンター主催の学内合同セミナー」(39%)が断トツ人気。定番の「就職情報会社主催の大学別合同セミナー」(17%)、「就職情報会社主催の合同セミナー」(14%)の2倍以上になっている。
 「キャリアセンター訪問」も25%の企業が支持している。「研究室訪問」は18%だが、この調査は文理を問わずに質問しているので、理系採用する企業に限ればもっと高い割合になるだろう。
 この5~6年の採用活動はWeb依存が強く、人事の採用活動はデスクワークで済むことが多かった。出掛けることがあっても就職情報会社の合同セミナーへの出展程度だった。
 ところが今回のアンケート結果を見ると、人事が大学に出掛けていって採用活動をするスタイルに変貌しつつある。これは大きな変化だ。

 もう1つ注目したいのは「選考を伴わないオープンセミナー」(23%)と「インターンシップ」(14%)だ。インターンシップはこの数年で採用活動の定番メニューになり、半数の学生が何らかのインターンシップに参加しているといわれる。そしてインターンシップ参加学生の8割が2社以上、6割の学生は3社以上受講しているというデータもある。
 インターンシップは夏期休暇中に行われることが多く、基本的には選考の場ではないが、学生の業界理解、仕事理解を深める目的で行われている。ただし学生にとっては就活の一環であり、人事は優秀学生との出会いを求めていることも否定できない。

●個別企業の採用施策の個性と課題

 「2012年度の新卒採用活動」に関する人事担当者のフリーコメントが面白い。まず、現在の就活・採活に関して批判、否定的な意見が多い。

・2011卒向け実績はインターネットの非効率性が発生。企業も学生も多くの無駄な活動を行っている。
・2011卒の活動は就職ナビにおける説明会のエントリーで満員が続出した反面、当日欠席が絶えない事態になっている。気軽にエントリーできる就職ナビの存在意義が問われている。
・あまりにも早い時期(5~6月ごろ)から現3回生向けの営業を行っているありさまであり、企業側としては採用計画も固まっていないし、学生側の意識も十分に醸成されない状況であろうし、そんな時期から動くのは理解に苦しむ。

 これらは就職情報会社が作り出した「就職ナビ」の弊害を指摘している。そこで、大量学生エントリーに対する予防策を講じることになる。

・適性検査による早期スクリーニング
・志望度が低い学生の無駄なセミナー予約防止策
・会社説明会の前に仕事説明会の実施を考えている。“モノを売る”仕事の基本的な考え方や、自動車営業における普遍的な仕事内容を説明し、仕事内容を明確にすることで“何となく”エントリーした学生を淘汰したい(淘汰されたい)。

 膨大なエントリー学生に困惑し、何とか無用な学生をふるい落としたい人事の気持ちが伝わってくる。

●大学に足を運び、絆を太く強く

 大学との関係についても強化しようとする企業が増えているようだ。

・キャリアセンターの訪問により、学生動向を良く知る。
・個別の学内セミナー参加
・内定者をパイプ役とした研究室・部活・サークルなどへのアプローチ
・大学とのコミュニケーションをさらに密にし、学生のエントリー数を増やす。
・就職課とのより一層の密な関係の構築。活動期間が長期になると、就職課に学生が情報をもらいに行く傾向があるので、そこをにらんで。

 就職ナビを軸にしたWeb採用はバーチャルであり、汗をかかないし足を運ぶ必要もなかった。しかし2012年度採用では、その限界が見え始めているようだ。
 この10年間の採用活動を振り返ってみると、就職ナビが高度化したことにより大きな変化が起きた。就職情報会社は利益率の高い就職ナビの営業を優先し、「多数の学生が集まり、大きな採用母集団が形成できます」「このシステムを使えばエントリー学生が自動処理できます」と楽な採用活動システムを人事に勧めた。
 自由応募、オープンエントリー、大学名不問を標榜するWeb採用システムが常識化し、大学と企業の絆が細くなっていった。しかしどうやら2011年度採用で就職ナビ主体の時代は頂点に達し、2012年度から独自に努力し、大学との関係を重視する企業が現れているようだ。

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カーリング人気萌芽の時代から、平昌五輪での銅メダル獲得まで戦い抜いてきた著者。リーダーとして代表チームを率いつつ、人生の一部としてカーリングを楽しめるにまで至った軌跡や、ママさんカーラーとして子育てで得た学びなどを語る。