「資源高でデフレ」になるGDPデフレーターの罠 「デフレの正体はインフレ」という理解が必要だ

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ここでCPIとGDPデフレーターの近況やその構成上の違いを整理しておきたい。諸外国に比べて抑制されているとはいえ、日本のCPIも足元で上昇に転じている。昨年4~6月期こそマイナスだが、その後の7~9月期、10~12月期とプラスに転じている(前期比マイナス0.5%→プラス0.5%→プラス0.2%)。CPIは今年1~3月期もほぼ確実にプラス幅を拡大させるだろう。

ところが、GDPデフレーターははっきりと下落している。具体的にGDPデフレーターは昨年4~6月期から10~12月期まで3四半期連続でマイナスが続き、しかもマイナス幅が拡大している(前期比マイナス0.4%→マイナス0.4%→マイナス0.8%)。この違いは前述のように輸入財の扱いに起因している。

輸入財のPPI、CPI、GDPに及ぼす影響を見極める

定義上、両者の差異を端的に示すと「CPIは国内消費を対象とし、輸入された財の価格も反映する一方、GDPデフレーターは輸出品を含む国内で生産された財の価格を反映する」という違いがある。一方、企業部門の負担を示すPPIの上昇の過半は原材料価格、言い換えればかなりの部分は輸入財の価格に起因している。

(2)のグラフで見たように、GDPデフレーターの下落は輸入デフレーターに引きずられている。つまり、PPI上昇もGDPデフレーター下落も企業部門の負荷が増していることを示唆しているという意味では同じである。片や、CPIは輸入財の価格も反映するので当然上昇する(一部は企業部門が吸収するので上昇しにくい)。

グラフ(3)のように、2000年初頭を100として推移を見た場合、CPI(総合)に比べてGDPデフレーターは低迷が目立つ。この背景に輸入財価格の上昇による交易条件の悪化があったことは以下のグラフでよく分かる。CPIよりもGDPデフレーターのほうが日本経済の低迷ぶりと整合的な印象も抱かれる。

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