取引先に「仕事が雑だよね」はパワハラにあたるか 2022年4月から「防止法」が中小企業でも施行
しかし、それ以上に会社はXに対して「自分の意見ばかりを強く主張する問題社員」という認識をしていたようで、周囲の従業員からの評価もほぼ同様だったのです。また、Xがとっていた記録を精査すると、細かい部分で齟齬があったり、「パワハラをされた」と主張する場面にいたほかの従業員の証言などから、「パワハラとはいえない」という事実が判明したりもしました。
結果的に、会社としてはパワハラの存在を認めず、有期雇用だったXの契約満了時に再契約をしない(=会社を去ってもらう)という形で決着しました。相談から決着まで半年ほどの時間を要しました。
紹介した事例はやや特殊ですが、被害者あるいは行為者としてパワハラ問題に巻き込まれた際は、自分だけで抱え込んではいけません。早めに会社に状況を伝え、相手とは周囲に従業員がいるところで接するなど、客観的な第三者の目が入るように心がけることが、自分の身を守る大事なポイントです。
納得できなければ裁判沙汰になることも
ひとたびパワハラが起こってしまえば、被害者が精神的・身体的なダメージを負うことはもちろん、行為者や企業も損害賠償請求を受けたり、社会的信用を失ったりするリスクが生じます。
「パワハラがあった/なかった」を立証するのは、多大な労力がかかります。社会保険労務士のような専門職が入って、聞き取り調査などを通じて客観的な証拠を集めても、当事者に「パワハラがあった/なかった」を認めさせることは非常に難しいです。
最終的に当事者が納得できなければ、裁判しかありません。パワハラをめぐる争いが長引くことは、当事者のみならず、周囲の従業員にとっても負担が大きくなります。
こうした事態を避けるためにも、企業は雇用管理上必要な措置として、「企業によるパワハラ防止の社内方針の明確化と周知・啓発」「苦情などに対する相談体制の整備」「被害を受けた労働者へのケアや再発防止」などに取り組むことが、パワハラ防止法で定められているのです。
特に重要なのは、「そもそもパワハラという行為は何なのか?」を従業員がきちんと知ること。そして、企業にもパワハラ防止意識の土壌があるということです。パワハラ防止法の中小企業への施行をきっかけに、従業員がハラスメントを正しく認識できるような意識づくりや、知識の啓蒙が大切になってくるでしょう。
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