さて、コンビニ店頭で販売される商品は、ナショナルブランドかPB(プライベートブランド)の別はあっても完成品だ。利益=販売価格−卸値で決まっている。店頭でさらに収益を上げるなら、店員であるパート・アルバイトの人件費は既に決まっているので、店内で加工度を高めて収益を上げられる「店内調理品」を充実させることに走るわけだ。
収益率の高い店内調理品の中でも、最も単価アップが期待できるのが「おでん」である。なぜなら、「コロッケ1つ」とか、「チキン1つ」というように、揚げ物系の店内調理品は基本的には単品注文。しかし、おでんで「はんぺん1枚」とか「大根1つ」とか単品で注文する人は、まずいない。
同一商品の買い増し・買い換えを促進することを「アップセリング」という。その意味で、おでんは店内調理品の優等生であるのだ。
しかし、上記11月3日の日経MJの記事には昨今の変調が記されている。消費者の節約志向や他チェーンとの競合激化で、おでんの購入数量も1人当り4個程度で頭打ち感が出ているという。
そこで、70円均一の1つの理由が考えられる。もちろん、前掲のコラムのコメントにあるように、値引き合戦的な意味合いもあるのだろうが、「7個買ってワンコインというわかりやすさ」というコメントが最も正解に近いのではないだろうか。キーワードは「わかりやすさ」だ。
■分かりやすさが生む価値
おでんにはネタがたくさんある。セブンイレブンのコメントでは大根が最強とのことだが、各社が魅力を出そうとすれば、限られたスペースの中で工夫して変わり種も取り込むこととなり、種類は増える。しかし、選択肢が多くなれば、人は、結局無難な“いつものもの”を選んでしまう。
行動経済学では、この習性を「現状維持の法則」という。以前、放映されていた、プリンストン大学の行動経済学者・シャフィール博士が解説をする大和証券グループのCMを覚えている人もいるだろう。人は選択肢が多いと、凡庸な選択をしがちなのだ。
さて、おでんの場合も、数多いネタを目の前にして、迷ったあげく、結局、大根といくつかの定番ネタに落ち着く人も多いだろう。さらにネタごとに価格がバラバラだったら、支払総額の計算が面倒になる。うっかり、新しいものに手を出して「思ったより高く付いた!」ということになるリスクを回避しようという意識が働く。
故に、「均一価格のわかりやすさ」が必要であり、「消費者に対するお得感」と「競合との価格比較」で「70円」という金額が決まり、「70円均一」にたどりついたのだと思われる。
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