消費増税1年半延期に潜む「空手形リスク」 安倍首相の決断のあやうさ
[東京 18日 ロイター] - 安倍晋三首相は18日、来年10月に予定された消費税率10%への引き上げを2017年4月に1年半先送りすると正式に表明した。
景気腰折れを回避しデフレ脱却を確実にするためというのが理由だが、景気弾力条項を外して3年後の確実な実施を明確にしても、経済情勢から「空手形」になるリスクがあり、有識者からは首相決断の危うさを指摘する声が浮上している。
点検会合、6割強が予定通りの実施に賛成
17日朝の市場には衝撃が走った。政府が再増税の是非を最終判断する際に重も要視する7─9月期GDP(国内総生産)は事前予想の下限を下回り、2四半期連続のマイナス成長に沈んだ。4月の消費税率引き上げの反動減が長引き景気回復の鈍さが裏付けられたとして、市場では、増税先送りは決定的と映った。
しかし、有識者の見方は少し違った。同日午後に開かれた「消費税再増税を判断するための有識者点検会合」では、有識者10人のうち、8人が予定通り来年10月から消費税率を10%に引き上げることに賛成し、2人が引き上げに反対を表明した。4日に始まった計5回、45人の有識者の6割強が予定通り実施すべきと主張した。
判断の参考にするとした点検会合の多数意見を覆し、安倍首相が下した決断は、消費税率10%への引き上げ延期。1年半先送りし2017年4月とすると正式に表明した。先送り時期を明言し、景気情勢に応じて実施を見合わせる「景気弾力条項」を外すことで、その時までに必ずデフレ脱却を行う決意を示すとともに、再々延長はしないことを担保し、財政健全化に対する政府の信任維持に気を配った。
ただ、首相の決意を額面通り受けとる向きは少なく、走り始めた解散モードを止めることもできなくなっていた事情が透けてみえる。