原油から国際関係までウクライナ危機最新報告 米国は単独でもロシア産原油の米輸入禁止を検討

拡大
縮小

 ロシアのエネルギー問題を担当するノバク副首相は7日、ウクライナ侵攻に対する欧州の制裁措置への対抗策として、既存のガスパイプライン「ノルドストリーム1」経由での天然ガス供給の停止も辞さない構えを表明した。エネルギー市場の混乱を深め、消費者物価のさらなる上昇を招く恐れがある。

欧州連合(EU)首脳は域内のエネルギー安全保障戦略を抜本的に改革し、ロシア産化石燃料への依存から段階的脱却を図る計画を承認する可能性がある。バイデン米政権はロシア産原油の米輸入を禁止することを検討している。S&P500種株価指数は前週末比3%安と2020年10月以来の大幅安となった。

ウクライナとロシアの代表団は7日、ベラルーシのポーランド国境近くで3回目の停戦交渉を行った。ウクライナ側発表によると、停戦に向けた有意な進展はなかった。人道回廊設置についてはウクライナ側が「わずかに前向き」な進展があったとしたのに対し、インタファクス通信によると、ロシア側代表は8日に機能し始めると話した。双方とも交渉を継続する姿勢を示した。

ロシアのプーチン大統領は週末に、ウクライナが要求を受け入れるまでは戦争を続けるとあらためて主張していた。トルコのチャブシオール外相が明らかにしたところでは、ロシアのラブロフ外相とウクライナのクレバ外相は、10日にトルコのアンタルヤで会談することに同意した。

ウクライナ住民の避難先出所:UNHCR、ユーロスタット

ウクライナ情勢を巡る最近の主な動きは以下の通り。

欧米の安全保障関連支援はウクライナに届いている-国防総省

米国防総省のカービー報道官は記者団に対し、米国と欧州同盟国による安全保障関連の支援は引き続きウクライナに届いており、同国軍が有効活用していると明らかにした。またウクライナに侵攻したロシア軍は士気と供給、燃料の問題に直面しているほか、空軍と地上部隊の連携がうまくできていないと指摘した。

フィッチ・グループ、ロシアでの商業活動停止へ

フィッチ・グループは、ロシアでの商業活動を停止すると発表した。

ロシア産原油の禁輸と関税引き上げで枠組み合意-米議会主要議員

米議会の主要議員らは7日、ロシア産原油の米国への輸入を禁止する超党派法案の枠組みを発表し、禁輸措置を迅速に導入する道を開いた。

ウクライナ侵攻を巡りロシアのプーチン大統領に対する経済制裁強化で禁輸措置をホワイトハウスと議会に求める圧力が強まる中、通商問題担当の下院と上院の委員会を率いる共和・民主両党トップらが枠組み合意を発表した。下院は同法案の採決を早ければ9日に行う可能性がある。

ロシア、世界で最も多くの制裁科されている国に浮上-イラン抜く

ロシアはプーチン大統領がウクライナ侵攻を開始してからわずか10日間で世界で最も多くの制裁を科されている国となった。

世界の制裁を追跡調査するデータベースのキャステラム・AIによると、先月22日から米国と欧州同盟国が主導する形で制裁措置が急増。新たに2778の制裁が科され、合計で5530強と、核プログラムやテロ支援などでこの10年に制裁が科されたイラン(3616)を抜いて最多となった。

ロシアとの交渉、停戦では大きな成果なかった-ウクライナ

ウクライナとロシアは休戦と停戦について「集中的な協議を継続する」と、ウクライナのポドリャク大統領府顧問がツイッターに動画を投稿した。

同顧問は人道回廊のロジスティックを改善する上で「わずかに前向きな」進展があったとしつつ、停戦や休戦に関しては有意な成果がなかったと語った。

一方インタファクス通信によると、ロシア側の代表者は交渉がロシアの期待を満たすものではなかったが、今後も継続すると発言。人道回廊は8日に機能し始めるとロシア側は見込んでいるとも述べたという。

シカゴ小麦、過去最高値で終了-ウクライナからの供給途絶で

7日のシカゴ市場で小麦先物は過去最高値で取引を終えた。ロシアのウクライナ侵攻により世界有数の穀倉地帯であるウクライナからの供給が途絶えている。

EU首脳、ロシア産エネルギー依存の段階的削減表明を検討-草案

欧州連合(EU)加盟国の首脳は、域内のロシア産化石燃料への依存を段階的に削減することを表明し、域内エネルギー安全保障戦略について最大規模の見直しを承認する可能性がある。ブルームバーグが確認した草案で明らかになった。

中国、太平洋版NATO構築しないよう米国に警告

中国は米国に対し、北大西洋条約機構(NATO)のような組織を太平洋で構築することを目指さないよう警告した。台湾に関する安全保障面での対立とウクライナを巡る対立は「全く比較できるものではない」とした。

中国外相、EUに追加制裁は効果ないと主張

中国の王毅外相は欧州委員会のボレル副委員長(外交安全保障上級代表)に対し、これ以上の対ロシア制裁は効果がなく、緊張を悪化させ難しくするだけだと主張した。両者の会談後、中国外務省が発表文をウェブサイトに掲載した。

王外相はまた、中国はロシアとウクライナの緊張緩和支援で建設的な役割を進んで果たす意思があると表明し、ロシアとウクライナが交渉を継続し停戦に至ることを希望していると述べたという。

ロシア軍、ウクライナの核研究施設を破壊-IAEA

国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は、ウクライナ第2の都市ハリコフにある核研究施設をロシア軍が破壊したと述べた。同所に蓄えられていた放射性物質は少量で、放射能漏れは検知されていないが、原子力関連施設の周辺で戦闘が行われることによるリスクがあらためて浮き彫りになった。

同事務局長は戦闘が激化する中で原子力施設の安全を確保するため、ウクライナ、ロシアの政府代表と会談する用意があると表明した。

ロシア軍、ウクライナの核研究施設を破壊-IAEAが非難

ロシア、ウクライナの中立と領土分割をあらためて要求

ウクライナは憲法を改正して中立を宣言し、ロシアのクリミア併合とドンバス地方の独立を認めることをロシアは依然要求している。ロシアのペスコフ大統領報道官の発言として、ロイター通信が報じた。

ウクライナ政府がこれらの条件を満たし、戦闘をやめれば、ロシアは軍事作戦を即時停止すると同報道官は述べたという。ウクライナは憲法で北大西洋条約機構(NATO)加盟を目指すと明記しており、ロシアの要求を拒んでいる。

ロシア債CDS、デフォルト確率80%示唆

ロシア国債をクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)によって保証するコストが過去最高に上昇した。プーチン大統領が一部の海外債権者に対する支払いをルーブルに限定することを認める法令に署名し、デフォルト(債務不履行)の懸念が高まった。

ICEデータ・サービシズによると、1000万ドル(約11億5000万円)相当のロシア債を保証するコストは、前払い金約580万ドルプラス年10万ドル。これはデフォルト確率が約80%と見なされていることを示唆する。

ロシア債CDS、デフォルト確率80%示唆-債務返済をルーブルに限定

ロシアとウクライナの外相、トルコで会談へ

ロシアのラブロフ外相とウクライナのクレバ外相は、10日にトルコのアンタルヤで会談することに同意した。トルコのチャブシオール外相が明らかにした。「この会談が転機になることを期待している」と同外相はテレビ中継された記者会見で語った。

ウクライナ側からの確認は今のところ取れず、ロシア側はウクライナとの「接触」はあるだろうとの認識を示した。実現すれば、2月24日の侵攻以来で最も高位の政府幹部による会談となる。

EUのロシア産原油禁輸、ドイツは短期実現想定せず

ドイツ政府は欧州連合(EU)全域でロシア産原油を禁輸とする可能性を排除しないが、短期的に実現することはないと言明した。

ヘベシュトライト報道官は7日、ベルリンで記者団に対し、「緊急に行動を迫る圧力はない」とし、ドイツはその選択肢を検討し他のEU加盟国と協議しているが、EUは直ちに「次の制裁の応酬」に入るべきではないと述べた。

ロシアが非友好的な国のリスト承認、日米英やEUなど

ロシア政府は非友好的な国のリストを承認したと、インタファクス通信が報じた。タス通信によると、リストには日本や米国、欧州連合(EU)、英国などが含まれる。

世界貿易、戦争ですでに打撃-IfW

ロシアのウクライナ侵攻による混乱で、国際貿易はすでにほぼ全ての国・地域で減少が見られていると、ドイツのキール世界経済研究所(IfW)が指摘した。

IfWが7日発表したリポートによると、制裁で最も大きな打撃を被っているのはロシアで、2月の輸出は前月比で11.8%減少したと見込まれる。米国の輸出は3.9%減、欧州連合(EU)は2.8%減、ドイツは3.8%減の見通し。

ウクライナ、ロシアの住民避難提案を拒否

ウクライナの戦闘地域の住民をベラルーシとロシアに避難させるロシアの提案をウクライナ政府は拒否し、ウクライナ他地域に避難させる人道回廊の設置を要請した。

ウクライナのベレシュチュク副首相は「キエフ付近のウクライナ市民がロシアに逃げるためベラルーシに行くことはない」と言明。「各国首脳の信頼を操り、乱用するのをやめるようロシアに求める」とし、ロシアは「ウクライナ側が用意したルートを開く」べきだと主張した。

欧州のエネルギー価格が急騰、ロシアからの供給懸念-ガスは345ユーロ

欧州の天然ガス価格が7日の取引で過去最高値を更新した。米国がロシア産原油の禁輸を検討する方針を示し、エネルギー市場全体に新たな供給懸念が強まった。

指標のオランダTTFは一時79%上昇し、1メガワット時(MWh)当たり345ユーロに達した。

中国当局、ロシアとの関係について銀行を調査-ロイター

中国の国家外為管理局(SAFE)は先週、銀行を対象にロシアとの商業関係やリスクマネジメントの手続きについて調査した。ロイター通信が銀行や政策に詳しい関係者7人の情報を基に報じた。

中国の外為規制当局、ロシアとの関係について銀行を調査-ロイター

 

原題:Ukraine Update: Russian Official Threatens Europe Gas Pipeline、Ukraine Update: Latest Cease-Fire Talks Make Limited Progress、Ukraine Update: U.S. May Go Alone on Russia Oil Ban; Crude Soars、*RUSSIAN GOVT APPROVED LIST OF UNFRIENDLY COUNTRIES: IFX、*RUSSIA ADDS US, EU, UKRAINE, JAPAN, UK TO UNFRIENDLY LIST: TASS(抜粋)

More stories like this are available on bloomberg.com

著者:Ros Krasny

関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT