「株の暴落は最悪3年続く」と考えるべき明快理由 愚の骨頂・狼狽売り避けるマインド作りが重要

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暴落が発生しても、その日のうちに底値をつけたものもあれば、サブプライムローン危機とリーマンショックでは1年3カ月程度、また、ITバブル崩壊のように3年程度かけてジリジリと底値を切り下げていくパターンもあります。

しかしながら、私たちが想定しておかなくてはならないのは、最悪の事態です。したがって、ITバブル崩壊を参考にして、「3年程度」は下落し続ける可能性を念頭に置いておいたほうがよいでしょう。

失うことは得ることより「2倍つらい」理由

10万円の利益を得た場合と10万円を失った場合、金額は同じ10万円ですが、損失は利益よりも心理的な影響を大きく受け、それはおおむね2倍程度と言われています(プロスペクト理論と呼ばれています)。

つまり、10万円の損失時の嫌な思いを打ち消す喜びを得るには、20万円の利益が必要ということ。これは非合理的な感情のように思えますが、悪い出来事が起こった時に強い恐怖を感じることは、生物として生き残るための本能としては合理的な感情とも考えられます。

とはいえ、株式投資の世界では、この感情はリターンの阻害要因となるため、コントロールしていく必要があります。

株式に限らず、投資は安い時に買って、高い時に売らなくては、リターンを上げられません。感情のおもむくままに売買していては、どんどんとお金は逃げていってしまいます。

人間の本能に逆らう行動となりますが、株価が上昇している時には怖れながら、そして株価が下落している時には積極的に投資していくことで、リターンを得ることができるのです。

さて、ここまで、暴落は定期的に発生すること、暴落が起こった時にはどの程度株価が下落するのか、下落相場はどの程度の期間続くのか、そして暴落が起こった時に私たちはどのような感情を抱くのかを学んできました。

それに加えて当然ですが、暴落が起こると一時的に運用資産が減少します。このことを喜ぶ投資家は少ないでしょう。

しかし、暴落や下落相場は、私たち長期投資家にとって資産形成のチャンスとなり、喜ばしい状況と考えることもできるのです。

理由はこうです。株価が下落すれば、それ以前よりも安く投資ができます。

業績や配当が安定している銘柄へ投資ができていれば、暴落時においても減配されることはめったにありません。仮に減配されても、株価の下落率よりも減配率が大きくなることは少なく、多くの場合、これまでよりも高い配当利回りで投資することができるようになります。

つまり、株価が低迷している期間が長くなれば長くなるほど、安く投資できる機会が増えるのです。

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しかし、多くの人は暴落時に、運用資産が急激に減少していくことに耐えられず、狼狽売りして株式投資をやめてしまっているのが現実でしょう。非常に残念な話ではありますが、株式投資の歴史においては、このようなことが何度も繰り返されてきています。とくに投資初心者ほど、暴落が起こった時にはパニックに陥りやすく、安値で株式を売却してしまっています。

これは長期の資産形成において、絶対におこなってはならない行動です。人間は、自分が考えているほど強くありません。だからこそ、事前に投資や運用の仕組みを作り上げておき、本章で学んだように、暴落が発生することで何が起こるかを事前に知っておく必要があるのです。

長期株式投資 「日本の配当株」メインの個人投資家

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ちょうきかぶしきとうし / Choukikabushikitoushi

「日本の配当株」専門の個人投資家。1977年、熊本県生まれ。2004年株式投資を開始。ハイリターン・一攫千金を求め新興市場にて個別銘柄の投資をするも、ライブドアショックで痛すぎる損失を経験。以降、大型株へ投資対象をシフトするが、リーマンショックで含み損が600万円にまで膨らむ。2009年、ポートフォリオを大型配当株メインにスイッチ。以降は安定的に資産を増やし、2022年の税引き後の手取り配当額は282万5128円と過去最高を更新し、運用資産1億円を突破。近年は、19年間の投資生活で磨いた技術やノウハウをTwitterやブログにて発信。2023年3月、長年勤めた会社を早期退職し、オンラインサロンを開設。

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