ロシア金融制裁、中国がダメージ力を左右する訳 中ロの中銀はスワップ協定結び外貨の融通が可能
ウクライナに侵攻したロシアに対し米欧が打ち出した金融制裁に中国政府が抵抗すると決めた場合、中国の戦略的パートナーであるロシアを中国人民銀行(中央銀行)が金融面で支える可能性がある。
人民銀とロシア中銀は1500億元(約2兆7400億円)規模の通貨スワップ協定を結んでいるため、中ロ両国は企業の取引継続のため流動性を供給することができる。ロシアの銀行はまた、中国独自の国際決済システム「CIPS」に参加しており、これが国際銀行間通信協会(SWIFT)の国際決済ネットワークの代替にもなり得る。米欧はロシアの一部銀行をSWIFTのネットワークから排除することで合意した。
米欧が一部ロシア銀を国際決済網から排除、中銀にも制裁で圧力
人民銀は対ロシア制裁にどのように対処するのかはまだ明らかにしておらず、対ロシア支援が実施されるかどうかは分からない。ロシアの外貨準備状況や通貨スワップ枠など詳細について人民銀にファクスで2月28日に問い合わせたが返答はなかった。2015年から稼働するCIPSは、SWIFTと比べると極めて小規模だ。
中国の大手国有銀行2行はロシアからの商品購入関連のファイナンスを制限し始めており、中国は今のところ慎重に対応している。ただ、中国企業によるロシアからのエネルギー製品などの輸入を支援するため、スワップ協定が利用されることはあり得る。
中国の大手国有銀、ロシア産商品購入のための融資を制限-関係者
中国がロシアの金融支援に動く場合、外貨準備として保有されている人民元建て資産が活用される可能性もある。 ロシア中銀の直近データによれば、21年6月の時点でロシアの準備高の約13%(推定770億ドル=約8兆8700億円)が中国系資産だ。それらの保有資産を売却すれば、ロシアは一定の流動性を確保できるだろう。
深圳にある政府系のシンクタンク、綜合開発研究院の金融・現代産業研究所副所長を務める余凌曲氏は「ロシアの外貨準備における中国資産と人民元は、ロシアが米欧の制裁の影響をかわす有効な手段になり得る」と述べた。
米欧は主要7カ国(G7)内に保有されているロシアの準備資産の半分程度を凍結する措置を発表。だが欧州連合(EU)の外交トップであるボレル外交安全保障上級代表(外相)によれば、中国はそれらの制裁実施に参加しておらず、米欧はロシアが持つ中国系の準備資産へのアクセスを止めることはできない。
ボレル氏は週末、西側諸国は「モスクワや中国にあるロシア中銀の準備資産をブロックできない」と指摘し、ロシアは過去数年にわたりドル資産を減らし、一部の準備資産をユーロと人民元に置き換えることで、こうした状況に備えてきたとの見方を示した。
中国とロシアは「グローバル金融システムにおける米国とドルの覇権に挑みたい」と考えており、中国が米欧に追随しロシアの元建て資産を凍結する可能性は低いと余氏は語った。
中国政府のジレンマは米欧の制裁に違反することなく、どのようにロシアを支援できるかだ。習近平政権はロシアにそれらの資金と中国金融システムへのアクセスを提供し続けるかどうか、2国間の通貨スワップ協定を利用するかどうか選択を迫られる。
スワップ協定は、ロシアがクリミア半島を併合し制裁を受けた後、14年に締結された。協定の詳細やこれまでどう利用されてきたのかはほとんど明らかになっていない。昨年時点で1500億ドル近くに上る中ロ貿易を支える上で十分な規模かどうかは不明だ。
原題:Sanctions on Russia Puts Focus on China’s Central Bank (1) (抜粋)
(4段落目に加筆して更新します)
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著者:Bloomberg News
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