値上げで出荷減、製紙業界のジレンマ 2度の値上げで価格は震災前水準を突破だが・・・

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実際には、雑誌や書籍を作る出版社は、品質や供給面の安定性を重視し、ほとんどが国産紙を定期契約で調達。輸入紙はもっぱら、チラシやカタログなど商業印刷向けだ。それでも、輸入紙が印刷用紙市況に与えた影響は大きい。

震災による被災工場の復旧も漸次進んだ結果、今度は需給が緩み、印刷用紙は13年春ごろまで下落が続いた。

円安に転じた12年末以降、競争力の薄れた輸入紙は月6万トン水準へ逆戻り。国産紙シェアが回復したところで、印刷用紙首位の日本製紙は13年4月、1年半ぶりとなる印刷用紙の値上げを実施。同業他社も相次ぎ追随した。

円安で原料高へ

ただ、円安がさらに1ドル=100円台まで進行したため、製紙各社では輸入原料・燃料高の圧迫が強まった。そこで日本製紙は13年10月、異例ともいえる同じ年に2度目となる値上げを発表、各社も追随した。すでに、足元の国内企業物価指数で印刷用紙は震災前水準を上回る。日本経済新聞の市況データでも上質紙(印刷紙A)は1キログラム当たり129~135円と近年にない高水準で推移している(図)。

メリルリンチ日本証券アナリストの桑原明貴子氏はこう予測する。「原料・燃料高が収益を強烈に圧迫している。さらなる値上げはありうる」。

ただし、昨年の値上げでは価格が底上げできても、需要の落ち込みが痛い。日本製紙連合会によると、印刷用紙の9月国内出荷数量は前年同月比6.7%減と低調だ。「今は在庫を減らさなければならない局面。すぐの値上げは難しい」と桑原氏は指摘する。

すでに印刷用紙については、日本製紙、王子ホールディングスなどが減産を実施している。せっかく引き上げた価格水準を守りつつ、いかに出荷数量の回復を図り、さらなる値上げにつなげるかが、当面の課題だ。

(「週刊東洋経済」2014年11月15日号<11月10日発売>掲載の「価格を読む」を転載)

大滝 俊一 東洋経済 記者

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おおたき しゅんいち / Shunichi Otaki

ここ数年はレジャー、スポーツ、紙パルプ、食品、新興市場銘柄などを担当。長野県長野高校、慶応大学法学部卒業。1987年東洋経済新報社入社。リーマンショック時に『株価四季報』編集長、東日本大震災時に『週刊東洋経済』編集長を務め、新「東洋経済オンライン」発足時は企業記事の編集・配信に従事。2017年4月に総務局へ異動し、四半世紀ぶりに記者・編集者としての仕事から解放された

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