リニア新幹線、「直線ルート」に軍配。長野県敗北の舞台裏
リニア中央新幹線が2027年開業へ向け大きな山を越えた。国土交通省の交通政策審議会中央新幹線小委員会(国交相の諮問機関)が10月20日、リニアの想定ルートで「南アルプスルート(直線ルート)」の経済効果が最も高い、という試算を公表したためだ。リニアは直線ルートが事実上決定した。
リニアのルートは候補3ルートのうち、実質的には直線ルートと、南アルプスを北へ迂回する「伊那谷ルート」との、二つの争いに絞られていた。JR東海は所要時間や事業費などの観点から、「直線以外にありえない」という立場。それに対して沿線自治体の長野県は、地元製造業の集積地である諏訪方面を通る伊那谷ルートを主張してきた。
委員会調査では、基本ケースの東京|大阪間で見ると、直線ルートは費用5・5兆円に対し効果が8・4兆円。一方の伊那谷ルートは費用6兆円で効果は7・5兆円。距離が短く、建設費用も安い直線ルートのほうが、経済効果は高くなる。委員長を務める家田仁・東京大学大学院教授は「重要な結果で尊重しなければならない」と説明する。
“四面楚歌”の長野県
JR東海が全額自己負担で建設するのがリニア新幹線計画だ。「JRの主張するルートを覆すのは難しい」(専門家)とされてきた。が、リニアは整備新幹線と同様に全国新幹線鉄道整備法のスキームに従い、手続きが進む。全幹法の理念は「地域振興」で、JR東海も長野県の主張を門前払いはできない。結論は審議会に委ねられていた。
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