「新幹線」をあきらめきれない面々 奥羽、羽越、山陰、中四国、東九州・・・

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九州新幹線も整備計画の路線だ

一方、中央新幹線はもともと基本計画のひとつだった。ところが、JR東海が全額自己負担でリニア方式による建設の意思を表明したことで話が進む。11年5月に整備計画として「東京から南アルプスや奈良市付近通り大阪へ至るルートをリニア方式で計画するのが適当」との答申が交通政策審議会から出された。

その他の基本計画路線でも、完成を望む声が各地で出ている。新幹線が通る地域と通らない地域で、観光客といった交流人口や経済効果に格差が生まれていることから危機感を抱いているのだ。かなり先の将来になるかもしれないが、整備計画への格上げおよび開通に向けた布石を打ち始めている。それが山形県や中国・四国、東九州地方などの動きだ。

山形新幹線が、本来のフル規格新幹線なら東京―山形間は約2時間で結べる。現行から30分弱短縮できるだけでなく、大雪対策を含めた安全・安定走行により運休・遅延が減少する、というのが山形県の主張だ。2013年3月には奥羽―羽越新幹線の実現に向けたシンポジウムを山形市で開催、少しずつ機運を高めている。

中国・四国や東九州が持つ危機感

中国・四国地方でも新幹線整備を求める動きが活発化している。1993年から1994年にかけて中国横断新幹線、四国横断新幹線の建設を求める声が高まり、岡山県や島根県などで建設促進団体が相次いで誕生している。同線を整備計画線へ格上げするよう、要望等を行ってきたほか、フリーゲージトレインの導入による新幹線乗り入れなどを望む。

四国では「新幹線網整備の地域間競争で後れをとっている」との危機感から、財界や自治体などが中心となり、2011年11月に「四国の鉄道高速化検討準備会」を立ち上げ、今年4月に「四国における鉄道の抜本的高速化に関する基礎調査」をまとめた。

3つのケースで概算建築費や効果を算出しているが、その中で、1.5兆円をかけて四国新幹線の一部区間(徳島―高松―松山間)と四国横断新幹線(岡山―高知間)をフル規格新幹線で完成させれば、年間で169億円の経済効果が生まれ、「費用便益比(投入コストに対して移動時間の短縮、事故の減少を含む得られる便益の比率)が1を上回る」との結果を発表した。

東九州新幹線についても、大分県や宮崎県をはじめとする沿線自治体から着工を求める機運が高まってきている。12年の10月に九州地方知事会で、整備計画路線への格上げと財源確保を国に求める特別決議を採択。14年1月には「東九州新幹線鉄道建設促進期成会」のシンポジウムを久々に開催するなどここにきて活発化している。

こうした活動が活発化している理由として、整備計画にある新幹線(整備新幹線)のほとんどが、区間の完成までの道筋ができてきていることにある。2015年3月には北陸新幹線の長野―金沢間が開業、2016年春には北海道新幹線の新青森―新函館北斗間が開業する。2012年6月に着工が認可された北陸新幹線の金沢―敦賀間、北海道新幹線の新函館北斗―札幌間、長崎新幹線の武雄温泉―長崎間は、2035年頃までには完成する予定となっている。

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