東武、大当たりした「ホテルガチャ」企画の裏側 担当者がカプセルに詰めた「認知度向上」の戦略
新型コロナウイルス感染拡大の長期化で、ホテル業界は厳しい経営環境が続く。東武もさまざまな策を打ち出して集客に注力している。2021年10月には「浅草東武ホテル」に開業1周年記念企画として、本物の運転シミュレーターを設置した客室が誕生した。あまり遠征ができず不足しがちな鉄道ファンの“鉄分”を補給するニーズを取り込む考えだ。
東武スカイツリーラインの始発駅、浅草の駅前に建つホテルに、東武東上線のシミュレーターを置いたのは、池袋―小川町間のATC(自動列車制御装置)導入を控えて習熟訓練用に用いた設備を活用したため。2022年1月には札幌のホテルに第2弾が登場した。こちらは「SL大樹」で使用する蒸気機関車C11形207号機が、北海道の「SLニセコ号」などで運行されていたことにちなみ、室内にSL大樹をテーマにした装飾を施した。
ホテル事業戦略部の課長、栁憲太郎さんは「コロナ禍で人の移動がなくなったので、運転シミュレータールームのようなホテル自体を目的にしてもらう企画にまず力を入れ始めた」と話す。今回のガチャについては「予約段階から楽しめて、東武ホテルを知ってもらおう」という目的でスタートした。東武グループに日光・中禅寺の金谷ホテルや、マリオットの最新ブランドがあることを「なかなか訴求できていなかった」ことも企画の背景にある。
認知度向上に絶大効果?
ガチャは浅草や川越など比較的新しいホテルだけでなく、既存施設にも改めて注目が集まるきっかけになったと言えそうだ。例えば渋谷東武ホテルは、渋谷公会堂やNHKホールに通じる公園通りの坂を上った場所に建つ、開業47年を迎えた老舗。今回のガチャのプランではレストラン「竹園」の「楊貴妃」ランチコースを用意した。ガチャのお得感と併せて、渋谷にレストランが自慢のホテルがあることを知らない客層に向けては、絶好のアピールの機会になったはずだ。
名前に「東武」が付かない施設もある。栁さんは今回のガチャ企画について「SNSでの反響を見ても『ここも東武のホテルなんだ』と認知が広まって当初狙った効果はあった」と評価をする。さらに「実際にガチャを通じて宿泊や食事をしてくれた人に『また東武のホテルを利用したい』と思ってもらえれば」と今後に期待を寄せる。
予想を超えて“大当たり”したホテルガチャ。初めは「本当にこんな企画やるの?」と懐疑的だったホテル側も「次はいつやるの?」と前のめりになっているという。気になる次回のガチャ実施はいつになるのか。グループ内各部署との調整や、感染拡大の状況を考慮する必要はあるが「5月の大型連休明けに利用開始できるように検討したい」といった担当者の言葉通りに進めば、そう遠くない4月中の開催がありうるかもしれない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら