eスポーツ選手「差別発言で契約解除」で起きた事 「人権」というゲーム専門用語を知ってますか?

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実際、彼女を擁護する発言もSNSで散見されます。契約解除まではやり過ぎという意見もあり、日本人の感覚ではそこまでのことではないと思う人もいることはわかります。ただ、差別に関しては日本と海外ではかなり温度差があると言えます。フィジカルスポーツの世界では度々差別発言に対する問題が発生しており、それなりの処分をされています。メジャーリーグの大谷選手に対しての差別発言やバルセロナの選手がアジア人差別をした発言などが記憶に新しいと思います。

eスポーツは国際的な試合を行うことも多く、スポンサーやチームが海外資本であることも少なくありません。そういう意味では、差別に関する認識はグローバルスタンダードに合わせていく必要があるわけです。

すでに過去に投稿したSNSの発言については、スクショなどを撮られていたらどうしようもないですが、今後の認識として、どんなレベルでも差別的な発言をすることは活動に大きな支障をきたすことをチームも選手も認識しておかなくてはなりません。そもそも大事になるからではなく、根本から差別がよくないという認識を得るのが最良ではありますが……。そして差別には大小はなく、矮小な案件でも問題になるということです。

eスポーツにレッテルを貼るのは間違い

今回の件に関して、「ゲームをハードにプレイしている人に清廉さを求めることが無理だから別によいのでは」という意見や「eスポーツプレイヤーなんてやはりろくなヤツがいない」という意見も見かけます。擁護するにせよ、批判するにせよ、その主語をゲームやeスポーツとするのはさすがに的外れです。どの業界でも起きうることですし、実際にフィジカルスポーツの世界でも頻繁に起きていることです。今回の件は、たぬかな選手が引き起こした件であり、横並びに同業者を扱うことではないわけです。そして、良い意味でも悪い意味でもeスポーツやゲームにレッテルを貼ることも意味がありません。

差別的な発言をした人たちが一時的に職や立場をなくしたとしても、考えを改め、これまで以上にその業界に貢献するのであれば、復帰することは十分にありうることです。

なので、たぬかな選手はこれですべてを失ったのではなく、元々プレイヤーとして活動していたときと同じく、ゲームに真摯に向き合い、ファンや多くの人に感謝することで十分復帰することはできると思います。

eスポーツ界隈は、ゲームが好きな人が集まって誰が一番強いのかという、単純な構造からさまざまな要因を含んだ複雑な構造になりつつあります。以前の環境を知っている人にとっては窮屈でつまらない世界になってしまったかもしれませんが、すでに次のステージに進んでしまった以上、変わっていかなくてはならない部分ではあります。そのため、選手もチームも関係者もすべて考え方や常識を上書きしていかなくてはならないわけです。今回の件は、たぬかな選手にとっては大きすぎる痛手となりましたが、業界的には大きく変われるきっかけを作ってくれたと考えることが建設的なのでしょう。

岡安 学 デジタルライター

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おかやす まなぶ / Manabu Okayasu

eスポーツを精力的に取材するフリーライター。ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスに。さまざまなゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行い、関わった書籍数は50冊以上。現在は、ウェブや雑誌、ムックなどで活動中。近著に『みんなが知りたかった最新eスポーツの教科書』(秀和システム刊)、『INGRESSを一生遊ぶ!』(宝島社刊)。@digiyas

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