eスポーツ選手「差別発言で契約解除」で起きた事 「人権」というゲーム専門用語を知ってますか?

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つまり、たぬかな選手の発言を意訳するのであれば、「私は身長の高い男性が好みなので、170cm以下の人は最低基準をクリアできていないんですー」といった感じなのでしょう。

ただ、例えそうだとしても「人権」という言葉には本来の意味があるうえ、多くの人は本来の意味で捉えてしまうので、それは言い訳にはならないでしょう。また、これまでの彼女のライブ配信では数々の暴言ととられる発言をしているので、従来通りの意味で使った可能性も否定できません。

仲間内だけ通じるスラングの危険性

eスポーツにかかわらず、さまざまなコミュニティでは、仲間内だけで通じる言葉や隠語、スラングなどがあります。それらをうまく使うことにより、コミュニティの深部に入ることができると言えます。さまざまな業界で使われる業界用語もこれにあたります。これらの言葉をコミュニティや業界で普段から頻繁に使っているうちに、本来の意味を忘れてしまったり、ないがしろにしてしまうようになってしまいます。そして、それがそのコミュニティや業界以外でも通じる言葉だと勘違いしてしまうわけです。

ゲーム業界には、装備やキャラクターがアップデートによって弱体化することがあります。これを多くのプレイヤーはナーフと呼んでいますが、そもそもナーフは、海外の幼児向けのおもちゃのことで、弱体化するといった意味はありません。「これまで使っていた銃がナーフのおもちゃの銃にように弱くなってしまった」というような揶揄から弱体化=ナーフとなっていきます。このやりとりを知らない人にとっては、ナーフは弱体化という意味の英単語だと勘違いしてしまっている人もいるわけです。ナーフそのものにネガティブな意味がないので、勘違いしたままでも何の悪影響もないですが、今回の「人権」のように使いどころが難しい単語を違う意味として解釈し続けて使ってしまうと、今回のようなことが起きてしまいます。

これはどの業界でもありうることです。普段使っている言葉が一般的にはその意味では通じず、使っている本人はもはや元の意味で使う習慣が付いていないわけです。

そのあたりは監督すべきCAGの落ち度もあったと思います。彼女はこれまでも何度となく差別的な暴言やテレビ放送であれば放送禁止用語となりうるような下ネタ発言を繰り返していました。もしCAGが業界的でなく一般的な言語の感覚を持っていれば、今回の炎上騒ぎが起こるより以前に対処はできたのではないでしょうか。

今回の件は、比較的早くチームが彼女との契約を解消することを発表し、対処したように見えますが、それよりも早くレッドブルが公式サイトから彼女の写真やプロフィールなどを削除しています。その時点で、CAGとしては「いつもの彼女の暴言が話題になっている」程度の感覚から、後に大事であることに気がついたからだと推測できます。

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