2008年11月の米国大統領選挙では、事前に54%と低い投票率が予想された。そこでスタバは「選挙当日、店頭で『投票に行ってきた』と言えば、トールサイズ1杯差し上げます」というキャンペーンを行った(YouTubeのリンクはこちら)。
当日飲まれたコーヒーは普段の2.5倍。店内は活気にあふれた。スタバはこのイベントを通して、莫大な費用をかけずにスタバらしい方法で来客数を増やし、顧客と積極的にかかわる方法があることを学んだのだ。
さらに半年後の2009年、「地球温暖化防止のため、紙コップをやめてマグカップにしましょう。4月15日、マグカップを持ってきたらトールサイズ1杯差し上げます」というキャンペーンを全世界で実施した。
スタバはこのような取り組みを、マスメディア、ソーシャルメディア、そして店舗と従業員が一体となって展開してきた。スタバはこれを「ブランドスパークス」と呼んでいる。当時のブランド担当副社長Chris Abruzzoがブランドスパークスについて講演した動画がある。英語ではあるが、興味がある人はぜひ見てほしい("StarBucks Brand Sparks Strategy" 、O'Dwyer's June 22, 2010)。
スタバが広告を出さない理由
あなたはスターバックスの広告やテレビCMを見たことがあるだろうか? おそらくほとんど記憶にないだろう。実際にスタバは、上記のブランドスパークスのような活動で少額のおカネを使う以外には、広告費をほとんど使っていない。なぜか?
今朝、あなたが読んだ新聞で、何件の広告を思い出せるだろうか? 思い出せない人が多いのではないだろうか? 実際には、朝刊には100件近くの広告が掲載されている。朝刊の広告は、世の中の広告でも比較的高価な部類だ。それでも消費者の記憶にとどまっているのはわずかなのだ。
では生活者は、世の中にある情報のうち何%を消費しているのだろうか? 答えはわずか0.004%。2万5000件につき、たったの1件だ。〈「我が国の情報通信市場の実態と情報流通量の計量に関する調査研究結果(平成21年度)」より算出。1日当たり流通情報量は7.61×10の21乗ビットに対して、消費情報量は2.87×10の17乗ビット〉
つまり世の中には情報が氾濫している。広告も情報の一種だ。つまり広告の効果もますます下がっているのである。そしてスタバは、このことを熟知している。
では、スタバはどのようにプロモーションしているのか?
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