油断できない変更点、首都圏私鉄「春ダイヤ改正」 減便や種別変更でいつもの乗り継ぎが変わる?

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東急電鉄

各社で減便などを中心とした内容が目立つ中、比較的前向きな内容と言えるのが東急だ。もっとも大きなポイントは、2022年度下期予定の相鉄線直通に向けて進めていた目黒線の奥沢駅上り通過専用線が完成し、朝ラッシュ時に同駅で急行による各停の追い抜きが行われるようになる点だ。これにより日吉―目黒間急行の所要時間が3分短縮される。

一方、このような施設の改良はないが、東横線、目黒線、田園都市線の日中の上り急行も所要時間が1分短くなる。どこで時間を削るのかが興味深いところだが、コロナ禍による利用減・混雑緩和で停車時間を短縮できる可能性もあるだろう。例えば1駅10秒ずつ削るだけでも6駅で1分の短縮になる。

1つ期待したい点として、目黒線の上り急行は、大岡山で大井町線の急行大井町行きとの接続チャンスが増えるかもしれない。もし目黒線が直通先のダイヤをいじらずに時刻変更を行うとすれば、目黒着時刻を変えずに日吉始発を1分遅らせることになるのではないか。大岡山毎時45分発の急行大井町行きは、先行の各駅停車の発車が少しでも遅れると詰まり、ちょっとの差で目黒線急行に乗り継げないケースが多々ある。もし目黒線急行の発車が数十秒後倒しになれば、大井町線利用者(溝の口・二子玉川・自由が丘から目黒方面へ行く人)にとってもメリットのある改正となるかもしれない。

都心の地下鉄にも減便の波

京急電鉄

大きな変化点としては日中の京急久里浜―三崎口間が10分おきから20分おきに減便される点だろう。そもそもコロナ前からそこまでの本数が必要なのかと思える区間ではあり、むしろよく今まで10分おきを維持してくれていたと言ってもいい。

東京メトロ

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銀座線は毎時20本が18本になる。表参道にて同一ホーム接続となる毎時12本の半蔵門線と同じ6の倍数の本数に揃い、両線の接続は半蔵門線2本に対し銀座線3本に統一されるだろう。これに対し赤坂見附にて同一ホームで接続する丸の内線は毎時15本で4分おきだったのが13本となる(方南町支線は毎時7本)。銀座線に合わせて6の倍数の本数にならなかったのはわかりやすさと乗り継ぎ利便性の面では残念だ。

相模鉄道

相鉄は、ホームドアの設置駅増加に伴う各駅の停車時間見直しで所要時間がわずかに延びたり、始発列車の時刻が1~3分程度繰り上がるというのが主な内容だ。また、昨年春の改正で一度特急から各停に変更したJR直通列車の一部が特急に戻る。

このほか、平日は「夕方のラッシュ時間帯(18時30分~20時ごろ)の急行海老名行きについて、二俣川駅で同一ホームに必ず各停湘南台行きが停車しているように変更します」とある。急行1本に対して各停1本が待機しているかのように思えるが、発表内容をよく見ると各停は1本目の急行とその5分後の急行の2本を待って発車する。つまり先の急行に乗った場合は各停車内で5分ほど待つわけだ。ホームで待つよりはいいということか。

コロナ禍による乗客減などを受け、運行本数削減に踏み切る鉄道各社。本数が減れば不便になる部分はどうしても出るが、その中で極力影響を少なくしようとした部分、または切り捨てた部分がダイヤには表れる。はたして実際の改正後、利便性はどのように変化するだろうか。

北村 幸太郎 鉄道ジャーナリスト

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きたむら こうたろう / Koutaro Kitamura

1989年東京生まれ。2008年昭和鉄道高等学校運輸科卒業、2012年日本大学理工学部社会交通工学科マネジメントコース卒業。乗り鉄、ダイヤ鉄。学生時代は株式会社ライトレールにインターン生として同社の阿部等社長のもと、同社主催の「交通ビジネス塾」運営などに参加。

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