アメリカで盛り上がる移民排除への動き--ジョセフ・S・ナイ

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 1910年に外国生まれのアメリカ人は総人口の14・7%と過去最高を記録した。現在は11・7%である。アメリカは移民国家でありながら、多くのアメリカ人は移民に対して同情的であるよりも、懐疑的である。世論調査によれば、大多数のアメリカ人は移民を減らすことを望んでいる。不況はそうした反移民心理を増幅させている。2008年には39%が移民を減らすべきだと答えていたが、09年にはその比率は50%にまで増えている。

00年の国勢調査では、合法あるいは非合法の移民流入によって、ヒスパニック系の人口が増えていることが明らかになった。専門家は、50年にはヒスパニック系を除いた白人の数は人口の半分にまで減少すると予想している。これに対してヒスパニック系の住民は25%、アフリカ系は14%、アジア系は8%にまで増える見込みだ。

移民こそがアメリカの強さの源泉である

あまりにも急速な移民の増加は社会問題を引き起こす可能性がある。ただ、移民に寛容な人々は、移民が長期的にアメリカのパワー強化につながると主張している。先進国を含む83の国家と地域の出生率は低く、現在の人口を維持することができない。たとえば日本が現在の人口を維持するためには、今後50年間に毎年35万人の移民を受け入れなければならない。それは移民に否定的な文化を持つ日本にとって難しいことだろう。

それに対しアメリカは依然として移民国家である。国勢調査局は、アメリカの人口は今後40年間に49%増加すると予想している。現在、同国の人口は中国、インドに次ぐ世界第3位だ。大半の先進国が高齢化し、大きな負担を負っていることを考えると、移民の増加は経済力を増すだけでなく、多くの政策的な問題の深刻さを和らげる。

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