卵泥棒と蔑まれた恐竜は決死で子を守る親だった オビラプトルの化石からわかった「親の愛」の真実

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

あるいは、大洪水もその条件の一つだ。洪水が起これば、一気に土砂が押し寄せる。

こうして、土砂の下に埋まれば、化石になる条件が整うのである。 オビラプトルの化石は、巣の中で、卵と一緒に見つかった。

最初は卵泥棒と勘違いされてしまったが、現在では卵を抱いたまま化石になったと考えられている。

逃げ惑ったり慌てふためいたりしたのではない

逃げ惑う状態で化石になったわけではない。あわてふためく姿が化石になったわけでもない。

おそらくは、火山灰が降り積もる中で、オビラプトルは逃げようとはしなかった。

おそらくは、迫り来る土砂の中で卵のそばを離れなかった。

そして、卵を守り続けたまま、化石となったのである。

『文庫 生き物の死にざま はかない命の物語』(草思社文庫)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

オビラプトルは、卵泥棒ではない。

オビラプトルは、そういう恐竜だったのである。 恐竜ははるか昔に地球に存在し、今では絶滅してしまった生物である。

こんな大昔の生物に「親の愛」があったのだとしたら、と考えると、それはとても不思議な感じがする。 親の愛というものは、いったいどのようにしてこの世に生まれたのだろうか。

親の愛というものは、どのようにして進化を遂げたのだろうか。

そして、進化の頂点にある私たちホモ・サピエンスの愛は、オビラプトルよりも、ずっと進化したものなのだと言えるのだろうか。

本当に不思議である。

稲垣 栄洋 静岡大学農学部教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いながき ひでひろ / Hidehiro Inagaki

1968年静岡市生まれ。岡山大学大学院修了。専門は雑草生態学。農学博士。自称、みちくさ研究家。農林水産省、静岡県農林技術研究所などを経て、現在、静岡大学大学院教授。『身近な雑草の愉快な生きかた』(ちくま文庫)、『都会の雑草、発見と楽しみ方』 (朝日新書)、『雑草に学ぶ「ルデラル」な生き方』(亜紀書房)など著書50冊以上。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事