新型コロナの「第6波」に財政の備えは大丈夫か 憂慮される病床逼迫やロジスティクスの混乱

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第3波までに対応した2020年度予算では、同交付金は、新型コロナ対策予備費から9169億円が捻出され、別途補正予算では3兆6871億円が計上されて合計4兆6040億円が用意された。そして、決算段階までの支出は3兆0565億円となり、2021年度に1兆5140億円が繰り越された(予算との差額は不用額)。

2021年度予算では、前述の通り、同交付金は当初予算には計上されていない。決算が出ていないためまだ正確にはわからないが、第4波と第5波に際しては、同交付金は1.5兆円余の繰り越しが充てられていたとみられる。しかし、それでも足りないと判断したのだろう。2021年12月20日に成立した2021年度補正予算には、同交付金として2兆0314億円が新たに計上された。これで、同交付金は繰越と合わせて3.5兆円余となり、2020年度の決算額を超える規模になった。

2021年度補正予算には、ほかにも新型コロナの感染拡大防止のための予算が相当盛り込まれている。新型コロナワクチンの接種体制の整備や接種の実施のために1兆2954億円、治療薬の確保に6019億円、ワクチン・治療薬の研究開発・生産体制の整備に7355億円、予約不要の無料検査の拡大に3200億円を追加して計上している。さらに、2021年度当初予算で計上した新型コロナ対策予備費は、現時点で1兆8343億円がまだ残っている。

課題は財政よりも供給制約にある

こうみると、第6波が2021年度内に収束するならば、財政面では対応余力が確保されているとみてよいだろう。

財政面では対応できる備えがあるといえるものの、供給面では懸念が残る。PCR検査キットが不足していたり、濃厚接触者となって現場を離れなければならない医療従事者が多く出たり、救急搬送しようにも受け入れられる医療機関が少なかったりしている。こうしたロジスティクスでの課題は、これまでの第5波まででも指摘されていたが、あいにく第6波には十分に対応できる程度に備えられなかった。

これは医療だけに現れている課題ではない。ポストコロナを見据えれば、原材料の多くを輸入に頼り、少子化で労働力不足に直面する日本経済全体の問題として、サプライチェーンに現れるロジスティクスの弱点が、供給制約となって景気の好循環を妨げかねない。財政支出を出す備えができていても、供給制約が支障となれば、その財政の備えは活かされない。問題の所在を見誤ってはいけない。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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