新型コロナの「第6波」に財政の備えは大丈夫か 憂慮される病床逼迫やロジスティクスの混乱

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新型コロナ対応に費やした予算は、どこからどのように出しているのか。国民的には大変関心のあるところだが、それを切り出すことは容易ではない。それは次の一例をもってしてもわかる。

国立感染症研究所は、新型コロナ対応でも最前線に立つ国の研究機関である。常勤職員の中には新型コロナ対応に当たる人もいるが、それだけを専門に行っている機関ではない。常勤職員は、新型コロナの感染拡大がなくても継続的に雇用されていて、その人件費は、国の一般会計の中では厚生労働本省試験研究所共通費の中から捻出されている。この経費のうち、いくらが新型コロナ対応に費やされたかを切り分けるのは困難である。

この一例は、一事が万事で、新型コロナ対応のためにいくら費やしたかを正確に推計することは難しい。

臨時的に計上した経費はいくらだったか

そこで、継続的に計上している経費の中で新型コロナ対応に充てられた費用を切り分けることはやめ、臨時的に新型コロナ対応のために計上した経費でみて、2020年度と2021年度において、どのように財政面で対応したかをみることにしよう。

新型コロナ対応の経費は、医療から経済まで広範だから、ここでは医療に焦点を絞りたい。新型コロナ対応の医療提供体制を財政面から支えているのは、新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金である。これは、2020年度の補正予算で新設された。ただ、2021年度当初予算には同交付金は1円も計上されていない。

これは、同交付金が臨時的な経費と認識されていて、恒常的な経費を計上することが基本となる当初予算に計上せず、補正予算で対応する、というスタンスを反映したものと思われる。

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