医師が警鐘「オミクロン急拡大で今伝えたいこと」 新フェーズに入る中で考えるべき「3つの対応」

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これは、地域で風邪症状があった場合に積極的に検査を行い、風邪症状がある人のなかでコロナが陽性になる人の割合を示したもので、インフルエンザなどでは昔から行われているものだ。新型コロナウイルスでは、米国やイギリスなどで実施しており、分科会でも2020年5月からサーベイランスの必要性を提言してきたが、いまだ実現していない。

三重県では谷口医師との協働で地域のサーベイランスを行っているが、それによると、1月2日~8日の感染状況は、三重病院のある津市では0%、その北側に隣接する鈴鹿市は2.69%、鈴鹿市に隣接する四日市市は0%だった。

「0%のところであれば、今はまだ感染が広がっていないと考えられ、風邪症状があっても抗原検査は不要かもしれません。それが10%台になればかなり高いので、風邪症状=コロナ感染を疑って検査をした方がいい。こうやって地域の感染状況に応じた対応が、オミクロン株ではさらに必要になると思われます」

「業務継続計画」の見直しも必要だ

もう一つ大事なのは、企業や事業所のBCP(業務継続計画)の見直しで、これは分科会が前から訴えていることだ。人(従業員など)と業務と(業務)場所について、感染リスクを下げるための方法を再確認し、感染者や濃厚接触者が増加しても、社会機能維持に必要な業務(エッセンシャル業務)を継続することをいう。

リモートワークのような遠隔勤務もその一つだが、かならずしもそれができる仕事だけではない。従業員同士の距離を開ける、部屋を分ける、時差で業務を行うなどの対策が必要だという。

「これには従業員教育も必要です。オミクロン株は軽症のことが多いといわれていますが、感染者の数が増えれば一定数、重症者は出てきます。重症化率が1000分の1でも、100万人がかかれば、1000人は重症化します。また、後遺症についてもまだわかっていません」

「風邪程度だから大丈夫」という考えは、まだデータが揃っていない今、最も危険だという。

第1波から5波までみても、日本で感染が欧米ほど増えていないのは、国の力でも、行政の力でもなく、国民の一人ひとりの努力の結果だと、谷口医師は言う。

「この2年間で学んだことを、この経験を、オミクロン株でも役立てていかなければならないと思っています」

鈴木 理香子 フリーライター

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すずき りかこ / Rikako Suzuki

TVの番組制作会社勤務などを経て、フリーに。現在は、看護師向けの専門雑誌や企業の健康・医療情報サイトなどを中心に、健康・医療・福祉にかかわる記事を執筆。今はホットヨガにはまり中。汗をかいて代謝がよくなったせいか、長年苦しんでいた花粉症が改善した(個人の見解です)。

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