北朝鮮はなぜ「ミサイル」を撃ちまくっているのか ミサイル実験は2週間で4回の実験を行った

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核不拡散の専門家であるポラック氏は、これがアメリカを狙った交渉の戦略であるという考えを否定し、現時点で北朝鮮がアメリカとの交渉を望んでいる様子はないと主張している。また同氏は、「この戦略は外交的な働きかけとセットになっているわけではない」とし、「短期的な交渉上の優位性のために行われているのではない」としている。

短期的には話し合いを強行するためのものではないとしても、今回の打ち上げは単なる技術的なものではない。元国務省核不拡散担当官のバン・H・バン・ディーペン氏は取材に対し、「北朝鮮のミサイル活動には、非常に大きな政治的要素が含まれていることは明らかだ」と語った。

同氏はまた、「政治的な要素がなければ、活動のパターンはまったく異なるものになるだろう」とし、北朝鮮当局がミサイル実験とその結果についての詳細な声明を発表することを決めたという事実を指摘した。「どの実験を、いつ、どのように行うかは、政治的な理由で金正恩が決定している」とディーペン氏は見る。

政治的な2つの目的

北朝鮮専門のウェブサイト「38 North」にミサイル実験の分析を寄稿しているディーペン氏は、これらの発射の裏にある政治的な目的は完全には明らかではないが、北朝鮮当局は国内と国外の両方の聴衆に向けていると分析している。

党指導部は、その優れた技術力、特にそれが韓国に先んじているということを喧伝し、「国内における政権の正当性」を強化したいと考えていると、元国務省幹部は言う。そして、これは同時にアメリカ、日本、韓国など国外へのメッセージにもなっている、と同元幹部は見る。

昨年秋からの実験計画は、2つの主要な目標に焦点を当てていると専門家は考えている。それは、北朝鮮の核兵器が攻撃に耐えられるということ、そして、ミサイル防衛を無力化し圧倒する能力があるということをアメリカ、日本、韓国に示すことである。

今年1月以降の実験は、移動式発射システムの開発が進んでいることを引き続き実証しており、位置の特定や攻撃がはるかに困難な車輪付きの輸送機や列車などのプラットフォームにミサイルを搭載している。

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