北朝鮮はなぜ「ミサイル」を撃ちまくっているのか ミサイル実験は2週間で4回の実験を行った

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極超音速滑空体(HGV)あるいは機動再突入体(MaRV)と呼ばれるものだ。HGVはより進んだ特殊素材を用いるので大気圏により高い速度で突入でき極端な機動飛行を行うことができる。

北朝鮮は、より高度なHGVを昨年秋に初めてテストし、1月5日と11日に再びテストしたと声明を発表した。こうしたテストは、1000km離れた標的を攻撃するために劇的な操作を行ったHGVの「最終テスト射撃」であったとしている。

北朝鮮の超音速兵器は「ニッチな能力」

しかし、アメリカの専門家はこうした主張には懐疑的で、最近の実験はMaRVによるもので、ある程度の機動性を持っていたと考えている。「劇的な機動性」ではなく、「右旋回」だとディーペン氏は言う。これは、金正恩が発射を観察している写真に写っていたもので、日本の追跡調査で観察されたものとほぼ一致する軌道のビデオ画面を映し出していたという。

既存のレーダー追跡やミサイル防衛がこうした車両を攻撃するのは明らかに困難である、というのが専門家の大方の意見だ。しかし、赤外線衛星のデータで発射の様子や、軌道のかなりの部分を見ることができ、そのデータを韓国や日本の迎撃ミサイルの運用者と共有できるのだから、不可能とは言い切れないだろう。いずれにせよ、このMaRVは、北朝鮮がすでに実験しているミサイル防衛を打ち負かすほかの方法に比べると、貢献度は低い。

「これは、ゲームチェンジャーにはならない」とディーペン氏は見る。同氏は国際安全保障・核不拡散担当の国務副長官補を7年間務め、その前は、大量破壊兵器と核拡散に関する国家情報担当官を務めた経験を持つ。

「北朝鮮にはすでにミサイル防衛を突破する方法をいくつもある」と元高官は見る。「防衛を圧倒することができ、異なる兵器システムで同時に(標的を)狙うことが可能だ」。

憂慮すべき報道にもかかわらず、北朝鮮が主張する極超音速兵器はせいぜい「ニッチな能力」だと、彼は言う。「しかし、それはセクシーであり、おそろしいもので、北朝鮮は明らかにそれを見せつけようとしている」。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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