北朝鮮はなぜ「ミサイル」を撃ちまくっているのか ミサイル実験は2週間で4回の実験を行った

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さらに、ミサイル防衛システムの回避を目的とした極超音速滑空弾の初実験も行われた。昨年10月、北朝鮮は「国防発展博覧会」を開催し、これらをはじめとする兵器を展示。金正恩と軍の上級幹部が、新たなハードウェアの精巧な展示物を見て歩く姿が見られた。

今年1月初め以降、北朝鮮は4度のミサイル実験を行なっており、そのうち2発は極超音速ミサイルであると主張する一方で、固体燃料を使った短距離弾道ミサイルを鉄道軌道上から発射する実験も行っている。これらの実験はアメリカとの交渉の契機を作ろうとするものであり、影響力を持つための試みである、と解釈する人もいる。

今週、平壌で開かれた与党政治局会議の後に発表された声明で、北朝鮮政権は、アメリカの「敵対的警戒と軍事的脅威」を糾弾し、長距離ミサイルと核実験の現在の自粛を再考する可能性をほのめかした。

「北朝鮮は注意を引こうとして実験を行ったのだろう」と、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は1月13日、MSNBCに対して語った。ブリンケン国務長官は北朝鮮の動きについて、前提条件なしに協議を行うというアメリカの提案への反応と見なした。アメリカ当局者は最近の実験を最近の制裁への直接的な反応であるとさえ解釈している。

この見方はアメリカの北朝鮮専門家の間ですべて共有されているわけではない。「最近の相次ぐミサイル発射は自然発生的なものではない」と、北朝鮮政府との交渉経験が長く、同国の高官との会談を数多く行ってきたエバンス・リビア元筆頭国務次官補代理は語る。

ミサイル開発を終わらせるつもりはない

同氏の見方によれば、北朝鮮は複数の目的を達成するためのゲームプランに従っている。

第1に、おそらく何よりも、北朝鮮政府の狙いは「アメリカに動揺を与え、北朝鮮ミサイルが精密さと戦闘力の点で脅威を増しており、いまや朝鮮半島や日本国内のアメリカ軍基地を脅かしうるということを、アメリカ政府に再認識させること」だとリビア氏は語る。そして第2に、北朝鮮は、一連のミサイル発射がいまや通常の軍備の一部であることを証明しようとしている。

さらに、元国務省高官によれば、北朝鮮は「(北朝鮮の考えでは)ミサイルの脅威が高まっている今、制裁の緩和と引き換えに北朝鮮当局のミサイル開発を遅らせることをアメリカ政府が望んでいるかどうかを探るために、アメリカを対話に誘い出そうとしている」のだという。ただし、リビア氏よると、北朝鮮がミサイルや核開発を終わらせるつもりはない。

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