ローソン、成城石井を買収した真意とは? 玉塚元一社長に独占インタビュー

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成城石井ではここ10年ほどの間に、外食大手のレインズインターナショナル、投資ファンドの丸の内キャピタルと、親会社が次々交代。レインズ傘下では、親会社の意向で無理な出店を行おうとし、成城石井の「商品と店へのこだわり」がないがしろになった。その結果、業績も士気も下がった苦い教訓を持つ。(レインズによる買収、停滞、大久保恒夫社長就任(当時)による復活などについては、『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』(あさ出版、上阪徹著)を参照)

 

──買収は新浪氏と玉塚社長のどちらが主導したのですか。役員を送る予定は。

(主導は)僕だね。案件として本格的な検討を始めたのは、新浪さんがローソンの経営にほとんど関与しなくなった5~6月だから。一回、頓挫しそうになったが……。

経営陣に関しては、基幹部分を変えないということが、今回の買収条件の一つだった。ローソンから役員クラスは非常勤で2人ほど出す予定だが、あくまで現在の執行体制を支援する。

──「ローソンも丸の内キャピタルも三菱系列の企業。結局“出来レース”では」との皮肉な見方もあります。

三菱商事は多岐にわたる商売をしており、事業ごとの公平性やコンプライアンスを気にする会社。今回もガチンコの検討だったし、事前の情報交換もできなかった。

ローソングループの成長が大事

買収金額は有利子負債も含め約550億円。ライバル社からは「高すぎる」という声も漏れ、玉塚社長も「これがマックス(上限)」とする金額だった。550億円という額は、成城石井のEBITDA(償却前営業利益)70億円強の8倍程度の水準で、「適切」(玉塚社長)だとする。繰越欠損金による節税効果を見込めば、実質的な買収額は470億円という。ただ、直近1年間の経常利益率は7%と確かに高いが、この高収益が続く保証はない。

 

──既存店売上高がマイナス続きなのにM&Aをして、店舗のオーナーから不満の声が上がっていませんか。

ローソングループ自体が隆々と成長することが大事だ。成長し続けることが、優れた商品を生むし、投資も可能にする。そういう文脈で理解してもらえると思う。運営に長けたオーナーに、成城石井の小型モデルを将来やってもらう可能性もある。

──上期決算会見では、「国内コンビニ事業が最も大事」と強調していましたが、どう戦略を描いていますか。

日用品や医薬品の強化店を増やしたり、品ぞろえを拡充したりして、ニーズに対応する。まだまだ出店余地はある。ただし、単に出店数を目標にするのは極めてナンセンスであり、質を担保しながらやる。たとえば、1店舗当たりの粗利率を上げるために、強みのファストフードをもっと成長させていく。

セブン‐イレブンが強いのは事実だ。われわれの努力が足りないというのもある。セブンができていて僕らができていないことは、謙虚に自問自答しなければならない。そのうえでイノベーションや挑戦は大事。全社員で考え、全社員で実行する経営に持っていきたい。知恵を絞ってチームで結果を生み出すのが、小売業という商売の難しさであり、面白さでもある。

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