もともとフランスのマルシェやスーパーでは、野菜や果物、肉や魚は基本的に量り売りで、必要なものを必要な分だけ購入できるので、家庭での食品ロスを抑えることができます。
また、例えば食パンが余ったらフレンチトーストに、バゲットの残りはラスクに、クロワッサンの風味が落ちたらクロワッサン・オ・ザマンドにと、パンひとつ取ってもロスを減らすための知恵が昔から根付いているように、無駄やロスを嫌う気質があります。
一見ケチだと思われるかもしれませんが、賞味期限が迫った生鮮食品やお菓子などを購入する食品レスキューアプリ“Too Good To Go”を積極的に利用したりして、環境や社会への影響の低減に貢献しようとする意識が高いと思うのです。
ですから、一定以上の席数があるレストランではドギーバッグ(食べ残した料理を入れる容器)を提供しなければならない法律が施行された時も、食べ切れなかった料理を喜んで持ち帰る人が少なくありませんでした。
使い捨てプラスチックの使用も禁止
衛生上の不安を覚える人もいるかもしれませんが、こちらでは環境への意識が高い人としてむしろかっこよく映るほどです。なかには店側が提供するドギーバッグではなく、自ら用意した容器を持ち込む人もいましたが、そうした動きは今、コロナ禍での衛生面から残念ながら後退してしまっています。
市民の意識の高まりとますます厳しくなる規制によって、フランスでは近年、プラスチック汚染を減少させる動きも大きく進展していました。前述した循環経済法は使い捨てプラスチックの使用も段階的に禁止するよう定められています。
これを受けて、使い捨てではなく、繰り返し使えるグラスやストロー、ナプキン、ナイフ、フォーク類に替えるカフェやレストランが増えていたのが、新型コロナウイルスの感染のリスクから、再び使い捨てのものに戻ってしまっているのです。
実際、ペットボトルやパッケージ製品の消費は爆発的に増えていて、プラスチック包装メーカーの“Elipso”が行った世論調査では、回答者のほぼ4分の1の人が、包装の需要が20〜30%増加したと答えています。
フランス人のサステイナブル志向が元からの気質であるのは冒頭でも触れましたが、その動きを加速させたのは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によるものが大きいといわれています。
皆が本質的な価値を持つものは何かを考えさせられ、「買う量を少なくし、長く大切に使う」という元来の消費行動に拍車がかかりました。けれどその動きを後退させたのもコロナ禍の影響という社会はなんともジレンマを抱えています。
それでも総体的に見れば、フランスのサステイナブルへの姿勢は確固たるもののように見えます。事態が今後どのように動き、ジレンマを解消してゆくのか、注視していきたいと思います。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら