この回収ボックスには洋服だけでなく、リネンや靴、バッグ、ベルトなども入れられます。回収後に選別され、状態の良いものは回収ボックスの運営者が経営する特定のブティックで低価格で販売されたり、必要としている人たちのために輸出されます。
状態の良くないものは掃除用の布に再利用されるか、生地としてリサイクルされるという仕組みです。4年近く前に行われたフランスの消費者1000人を対象としたアンケートでは、80%の人が回収ボックスを利用していると答えています。
こうした循環システムが元から整っていたところに、近年の消費者のサステイナビリティに対する意識の高まりが、ファッション業界の動きを加速させているようです。2020年2月には、循環経済に関する法律が制定され、世界に先駆けてアパレルの売れ残り品の廃棄が禁止となり、リサイクルや寄付することが法的に義務付けられました。
デパートにセカンドハンドの常設店がオープン
昨年9月にパリを代表する二大デパート、「プランタン・オスマン」と「ギャラリー・ラファイエット」が続けざまにヴィンテージやセカンドハンドの常設店舗を開設したのも、そうした動きに沿ったもの。前者はエルメスやイブ・サンローランといったハイブランドのヴィンテージ商品を7階に展示、後者は本館3階に500㎡以上のスペースを割いて、数多くのブランドのセカンドハンドの展示に充てています。
フランス人はヴィンテージやセカンドハンドに抵抗がないどころか、大量生産の商品にはないオリジナリティーや古いものの作りの良さを求めてあえて探しに行くことも少なくなく、実際にフランス人の30%が過去1年間に中古品を購入しているそう(ギャラリー・ラファイエット最高経営責任者、Nicolas HOUZÉ氏による)。セカンドハンドの需要はすでに見込まれていますが、驚くのは両デパートが顧客に販売の機会も提供している点です。
私たち消費者は魅力的な商品を手頃な値段で求められるだけでなく、自分の着なくなった服を低価格でも売れることで中古品にセカンドライフを与え、サステイナビリティにも貢献できる。デパートがそのビジネスモデルを採用するところが画期的だと思いました。
アパレル業界が環境や社会問題を考慮して差し迫った必要性に対応する一方、消費者である私たちも自分たちの消費行動に責任を持つという良い循環は、食品業界にも顕著に見られます。
アパレル業界に先駆けて2016年の2月にこれまた世界初の法律、「食品廃棄禁止法」が施行され、売れ残った食品の廃棄を禁じ、売り場面積が400㎡以上の大型スーパーでは慈善団体やフードバンク(市場で流通できなくなった食品を、それを必要としている生活困窮者に届ける活動)への食品の寄付が義務付けられるようになりました。
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