撤退続く中国「学習塾」農業やアパレル転身の驚愕 政府の全面規制で8割が閉鎖、教育業界の現状

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とはいえ、中国経済とともに成長を続けて来た教育業界は、突如死刑宣告されたようなものだった。

楊さんの塾も、一時は廃業を考えた。しかし規制が出た時期には9月から始まる新年度の生徒募集も進んでおり、新ルールに適合するよう、カリキュラムを組み替える選択をした。

規制は小中学校で習う英国数理社などの主要教科の「先取り学習」を禁じたため、未就学児に読み書きや計算、英会話は教えられなくなり、歌を歌ったり、絵を描く授業に変更した。また、他社と提携してロボットを操作したり簡単なプログラミングを学ぶ授業も導入した。

規制に引っかからない範囲で「小学校の授業に適応できるよう」な授業も編み出した。それは本の読み聞かせだ。

楊さんは「読み聞かせをしながら漢字の読み方をさりげなく教える。自席にじっと座って聞いてもらうことで、小学校の集団授業で教師の話を聞ける訓練にもなっている」と明かした。

小中学生向けと未就学児向けで明暗

楊さんによると、未就学児向けの学前班は当面生き残れそうだという。規制が週末と長期休暇の授業を禁止しているのに対し、幼稚園・託児所と塾の役割を兼ね備える学前班は全日制を採用していることが多く、学校の先取り学習さえしなければ平日昼に開講できるからだ(ただし、当局は将来的に学前班も厳密に管理すると記載している)。

一方、小中学生を対象にしている学習塾は、週末と長期休暇に授業をできないと即致命傷になる。中国教育部は授業料にも縛りをかけ、非営利化を徹底した。規制発表時から数万人単位の人員削減や拠点縮小に着手した大手教育企業は、2021年10~11月にかけて中国本土での未就学児~中学生向けの学習塾経営から年内で撤退すると続々と表明した。

中国教育部は12月21日、規制前と比べ学習塾の83.8%、オンライン学習塾の84.1%を削減できたと発表した。残っている学習塾も非営利組織化しない限り、閉鎖するという。

企業は生死のがけっぷちにいる。教育業界最大手・新東方教育科技集団創業者の兪敏洪氏は1月8日、SNS投稿で「(規制によって)時価総額が90%、売上高は80%減少した。従業員6万人が退職し、授業料返還や退職者への補償金などで200億元(約3600億円)支出した」と総括した。

大手の学大教育は同15日、政府の規制の影響で2021年12月期の純損益が4億8000万元~5億9000万元(約86億円~101億円)の赤字に転落するとの業績予想を発表した。同社は2020年12月期に4368万元(約7億8000万円)の黒字を計上していた。

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