メンタル崩壊から復活した30代男性が語る「教訓」 元エリート自衛官に起きたまさかの事態

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正しい道にこだわりすぎていた:メンタルダウンするまでは、一度決めた道だから、上司の命令だから、妻子がいる身だから、と身動きがとれずにいたと語るわびさん。せっかくの自分の人生なのに、他人が作った正しい道にこだわっていたという。

しかし、人生を総合的に捉えるようになってからは自由度がかなり上がるようになった。目の前の仕事や評価に一喜一憂せず、自分の生き方に合わせて環境を選ぶ。大まかな方向が合っていればOKくらいの感覚で進む。道を変えたり、途中で寄り道したり、時には少し休みながら進んでいくぐらいでちょうどよいと語る。

また、他人を意識しすぎると心が疲れやすくなってしまう。自分の人生の主体は、自分である。

自衛隊で生き生きしている人の特徴

自衛隊の中でも、自分らしく充実した日々を過ごしている人はもちろんいる。わびさんが見た彼らの特徴は、趣味に没頭したり、いくつかいい意味での依存先を持っている人だという。

たとえば、業務が終わると外に出て、20キロくらいマラソンをする人。休日の朝4時から洗車に行く人。なかなか普通の人にはわかりにくいレベルで、各々が趣味に没頭していたそうだ。彼らは、仕事で何かトラブルがあっても依存先が複数ある。または、自分時間を保っているため回復が早い。

最近発売されたわびさんの書籍『メンタルダウンで地獄を見た元エリート幹部自衛官が語る この世を生き抜く最強の技術』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

一方、メンタルダウンする前のわびさんは、趣味も依存先もなかった。もしくは趣味さえも完璧主義が邪魔をしたという。頭の中でこれはできる、できないとシミュレーションして判別。その結果、趣味には結びつくことはなかった。

しかし、休職、転職を経た現在は、とても趣味が多い。畑作業やキャンプ、ビオトープ、DIY、筋トレ、SNSで出会った人との交流ほか、仕事とは関係ない趣味をたくさん持つようになった。以前と比べて時間とお金、心に余裕ができた。また、まずはやってみようと完璧を目指さなくなったという。

エリート自衛官だったわびさん。壮絶なパワハラを経験したのち、現在は時間やお金、精神的にも余裕を持ちながら幸せに過ごせている。

「メンタルは鍛えられない」とわびさんは言う。しかし、自分の気持ちにフォーカスすることで、ある程度予防・回復はできる。まずは、メンタルダウンについて知識を持つこと。耐える努力よりだけでなく、自分の心の声に、素直に耳を傾けることを、わびさんから学べるのではないだろうか。

松永 怜 ライター

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まつなが れい / Rei Matsunaga

東京生まれ。千葉育ち。理学療法士として医療現場で10数年以上働いたのち、フリーライターとして活動。WEBメディアを中心に、医療、ライフスタイル、恋愛婚活、エンタメ記事を執筆。 好きな場所は甲子園と神宮球場。地方大会から高校野球の応援に行くことも。そのほかライブ鑑賞、アクリル画を描くことが好き。

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