オバマ人気はなぜ地に堕ちたのか

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 オバマ政権は金融危機以後の景気後退についての政治的責任は少なくとも一時的には免れたが、景気回復の遅れと危機打開のために打ち出した巨額の財政支出に伴う長期的負担にのろわれている。

歴史的な2つの法案成立も威力なし

オバマ大統領は2つの歴史的な法律に署名した。1つは国民皆保険を目指した医療改革法であり、もう1つは1930年代の大恐慌以来と言われるウォール街改革を目指した金融改革法だ。しかし、医療改革法によって一般の消費者が恩恵を受けるのは早くとも2014年からであり、金融改革法も金融危機をもたらしたとされるウォール街のいかがわしい取引は規制されるが、アメリカの平均的な消費者や投票者には実質的な意味はほとんどない。ウォール街にしても議会による厳しい調査にもかかわらず、結局、比較的無傷だったという認識が広まっている。ウォール街の重要人物は誰一人、有罪判決を受けて獄につながれてはいない。

オバマ政権は医療改革法、金融改革法、さらにメキシコ湾沖の原油流出問題、エネルギー法などに多くの時間を費やし、現実の景気状況がいかに深刻かということを過小評価し、雇用拡大にしっかりした政策の舵取りをしていないという批判が優勢になっている。一般のアメリカ人の高まる憤慨に対応するオバマ政権の選択余地は極めて少ない。

おそらく追加的な財政刺激策が必要になるだろうが、民主党議員はそれに伴う選挙民の反感をおそれて、そういう選択を採りたがらない。国民はブッシュ政権の8年間の失政に対する苦い経験をまだ忘れてはいないが、共和党はオバマ政権に嫌気がさしている中間派の票を取り込もうとしている。
(ピーター・エ二ス、在ニューヨーク特約記者 =東洋経済オンライン)

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