安全な食品とそうでない食品を見分ける重要な鍵 あなたは「超加工食品」の存在を知っていますか

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大量生産された市販のアイスクリームの製造に一般的に使用される原材料を見てみよう。

石けんや合成洗剤、合成樹皮、香水にも使われる「酢酸ベンジル」。染料やプラスチック、ゴムにも使われる「C-17アルデヒド」。燃料ガスのブタン由来で、医薬品や殺虫剤、香水にも用いられる「ブチルアルデヒド」。一昔前、病院でアタマジラミの駆除に使われていた「ピペロナール」。糊やマニキュアリムーバーにも使われる「酢酸エチル」。リストはまだまだ続く。

アイスクリームはこうした原材料を含む超加工食品の1品目でしかない。キャンディやチョコレート、ピザ、朝食用シリアル、サラダドレッシング、マヨネーズ、ケチャップなどなど、多すぎてここには掲載しきれないほどの品目があるのだ。

ラベルでは「合成香料」とのみ表示

2018年にオーストラリアで販売されていた加工食品の61%が、NOVAグループ④に該当した。また、2016年に新しく発売された食品・飲料製品の数は2万1435品にのぼったが、これらのほとんどが超加工食品であることも判明した。

私たちが体内に送り込んでいる奇妙な化学物質のカクテルがどんなものか、想像できるだろうか?

たとえば2018年10月にアメリカ食品医薬品局(FDA)は、動物実験で発がん性の証拠が得られたとして、超加工食品に合成香料として使われていた複数の添加物の使用を禁じた。そのうちの1つ、「ベンゾフェノン」については、食品と直接接触するゴムの製造に使用することさえ禁じられたのだが、あなたがこの記事を読んでいる今も、大手を振って食品に使われている可能性がある。なぜならFDAの決定後2年間は、使用が認められるからだ。だがどの食品に使われているか知るすべはない。食品メーカーには、ラベルに「合成香料」以上の詳細を表示する義務はないからだ。

化学物質のカクテルには嗜好性がある。食べればなんども食べたくなる仕掛けが、この工業製品には化学的にほどこされている。

目の前にあると食べてしまうから、家の中に持ち込まないのがいちばんだ。

『科学者たちが語る食欲』(サンマーク出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

しかしラベル上でベールに包まれているかもしれない食品を見分ける方法はあるだろうか? 冒頭のカルロス氏は指針を示す。

「超加工食品を見分ける実用的な方法としては、NOVA超加工食品群に特徴的な成分が少なくとも1種類以上、原材料のリストに含まれているかどうかを調べるといい。つまり、キッチンで決して、またはめったに使われない食品成分(合成香料や高果糖コーンシロップなど)があればアウトである」

スーパーできれいに包装されたパッケージを手に取るとき、「工業製品も混じっている」ことを思い出していただきたい。そして、できることならホールフード(加工がほどこされていない、自然の形そのままの食材)を食べるのがベストなことも書き添えておく。

デイヴィッド・ローベンハイマー シドニー大学生命環境科学部栄養生態学教授

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でいゔぃっど・ろーべんはいまー / David Raubenheimer

オックスフォード大学で研究員および専任講師を10年間務めていた。世界中の大学や会議で講演を行っている。スティーヴン・J・シンプソンとの共著に『The Nature of Nutrition: A Unifying Framework from Animal Adaptation to Human Obesity』(未邦訳)がある。シドニー在住。

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