「シリコンバレー史上最大の詐欺」はなぜ起きたか セラノス元CEOホームズ有罪判決が意味する事
今は「何でも信じたくなる」時代なのかもしれない。セラノスの取締役ウィリアム・ペリーは、ビル・クリントン元大統領下で国防長官を務め、数学者、エンジニア、スタンフォード大学の教授でもあった。つまり、シリコンバレーの基準でも馬鹿ではないはずだ。
しかし、ペリーは2014年にニューヨーカー誌に、ホームズは「もう1人のスティーブ・ジョブズと呼ばれることがあるが、それは不適切な比較だと思う。彼女はスティーブにはなかった社会的意識を持っている。彼は天才だったが、彼女には広いハートがある」とまで語っている。
アップルへの憧れからセラノスへ
2011年にこの世を去ったジョブズは、セラノスの”スカウト担当”だったと言えるかもしれない。セラノスの研究所長アダム・ローゼンドルフは、ホームズの裁判で、同社は「次のアップル」になると思っていたと証言している。彼はアップルの共同創業者の伝記を読んでセラノスの仕事に応募したのだ。
「スティーブ・ジョブズを中心としたうねりは私にとって非常に魅力的だった。私は医療にもっとグローバルな影響を与えたいと考えており、診断法メーカーに入社すればそれが可能になると考えた」と彼は話した。
ローゼンドルフは、セラノスの虚偽の主張が明らかになる前に同社に幻滅していたが、ペリーは、新興企業が生き残りをかけた役員変更を余儀なくされた2016年12月まで粘った。
こうした信者がいたので、ホームズの夢はもう手が届くほどすぐそこにあるように思えたに違いない。技術陣が夜遅くまで働いて、彼女が雑誌の表紙を飾り天才と宣言されれば、もうできたようなものだったのだ。
ではこの有罪判決によって、残された人々、つまり彼女の支援者、投資家、かつてのファンたちはどうなるのだろうか。
おそらく、次の詐欺師の餌食になることだろう。シリコンバレーの約束はあまりにも甘いので、私たちはどうしてもそれを求めてしまうのだ。不老不死。暗号通貨。空飛ぶ車。火星。デジタル・ハーモニー。比類なき富。
フィッツジェラルドが書いたように、私たちはつねに、年々目の前で後退していく絶頂的な未来に吸い寄せられてしまうのだ。
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