「シリコンバレー史上最大の詐欺」はなぜ起きたか セラノス元CEOホームズ有罪判決が意味する事
シリコンバレーが、努力の美徳と一攫千金というアメリカ的な考え方の漫画バージョンとすると、ホームズはシリコンバレーを極端な形で象徴していたと言える。
彼女の自己改善計画で明らかになったように、彼女は自分を仕事以外に時間を割くことのできない機械に変えようとしていた。もちろん、これは彼女自身のためではなく、人類のためだった。ホームズは、シリコンバレーの「技術はわれわれに奉仕するためにあり、それがどのように行われ、何十億を稼いでいるか、あるいは機能しているかどうかなど、まったく気にする必要はない」という信条を完全に体現していた。
規制当局、投資家、記者など、誰かがセラノスの装置の機能を少しでも正確に知りたがると、同社は「企業秘密」と訴えた。もちろん、本当の秘密は、セラノスの装置は機能などしておらず、企業秘密など持っていない、ということだった。だが、ホームズのその答えは長い間有効だったのだ。
華麗なるギャツビーだった
ホームズの行動が伝統に根ざしていたのは、不正を秘密裏に行うことだけではない。彼女の自己改善計画はベン・フランクリンまでさかのぼるが、F・スコット・フィッツジェラルドが創作したジェイ・ギャツビーに最も鮮烈に表現されている。ジェイ・ギャツビーは、神秘的かつ魅力的でハンサムな大富豪だが、いくつか詐欺も行っていた。
ギャツビーは、実際ホームズの弟のようだ。彼もまたスケジュールとルールによって自分の居場所を手に入れた。彼の場合、それは若い頃に自分で本に書いた以下のようなルールだった。
午後5時~午後6時:発声練習、ポーズとその取り方
午後7時~9時:必要な発明の研究
ホームズとの類似点は、ギャツビーのスペルに対する認識の甘さにも及んでいる。「もうタバコはしゅわない、噛まない」と彼は自分に言い聞かせている。
ギャツビーは密造者でありながらウォール街を利用した不正も働いていた。偽の債券を売っていたのだ。ホームズは人類の最後の、そして、最大の夢であるシリコンバレーを選んだ。シリコンバレーは、今世紀の最初の10年間で、交通、友情、商業、政治、貨幣を再発明することを約束した。
特にホームズは、スティーブ・ジョブズのように現実を曲げるのが得意な天性のセールスマンだったので、血液検査はそれに比べれば簡単なことに思えたに違いない。2005年、ラジオ番組「テック・ネーション」のインタビューで、彼女はセラノスのことをこう説明した。