「シリコンバレー史上最大の詐欺」はなぜ起きたか セラノス元CEOホームズ有罪判決が意味する事

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「私たちは、患者さんが毎日血液サンプルのリアルタイム分析を受けられるように、すべての患者さんが家庭で使えるような、カスタマイズされた医療ツールを作ることに焦点を当てました」

こうした発明に拍手を送らない人はいないだろう。セラノスは、面倒で不確実で時間のかかる医療プロセスを、楽で苦痛のないものにしたのだ。「小さな小さな針で、血液をほんの小さな一滴だけ採ります」と、彼女は言った。あとはソフトウェアがやってくれる、と。

テック・ネーションの司会者モイラ・ガンは、コンピューターサイエンスの修士号と機械工学の博士号を持っているが、すっかり引き込まれていた。「エリザベス、あなたは何歳なの?」と彼女は聞くと、ホームズは「21歳です」と答えた。

彼女の年齢が話題になったのは彼女の主張を否定するためではなく、いかに素晴らしいかを強調するためだった。「私の2人の子どもにも言っておくわ、さっさとしなさいって」とガンは感嘆してこう言った。

誰もホームズを非難しなかった

ホームズは、セラノスの装置は「製造段階」にあると述べた。さらに、「今年の半ばから後半にかけて、製薬会社のパートナーにリリースしたい」と付け加えた。13年後、同社が解散するまで装置がリリースされることはなかった。

しかしながら2005年当時は、我らの天才への期待は21歳で血液検査を再発明しただけでも十分と言えないほど非常に大きくなっていた。ホームズは自分の将来について聞かれ、シリコンバレー流の答えを返した。「まだまだこれからです」と。

セラノスはすでに「次世代」の装置を試作していると彼女は話した。より高速にするために小型化し、「処理能力をより高くする」、そして自動化されていて、「装置には指一本触れる必要がない」と。

ホームズが初めて受けたメディアのインタビューで彼女は、セラノスは実際に人に触れることなく健康状態を分析することができる装置を実用化していると発言した。誰もそのことで彼女を非難しなかった。彼女と、彼女の副官でボーイフレンドのラメッシュ・バルワニ(同社のCOOで「サニー」と呼ばれている)が、実際に機能するものができるまでシリコンバレーの伝統にのっとって図太くやろうと考えたのも無理はない。

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