短命のはずだった車両「走ルンです」の数奇な運命 実は長寿のJR東209系、私鉄のほうが寿命短い?

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ところで、「走ルンです」が登場してから30年近くが経過したが、実際にはどうなったのか。実は、「寿命半分」をうたった209系が長く使用される一方で、長く使われるはずの私鉄車両が別の「寿命」問題で廃車されている。先に書いた「私鉄の車両は、JRの車両よりも寿命が長い」という、今までの流れが覆る事態が起きているのだ。

冒頭、京浜東北線で使用された209系が房総地区などを走っていると触れたが、本来ならば、房総地区に新車が導入され209系は廃車となっていたのかもしれない。だが、2018年当時は車両メーカー各社が大量の新車を造っていた時期でもあり、メーカーから見ればこれ以上受注ができない状況にもあった。その一方で、209系も劣化した部品を交換すれば使用できたために、房総地区に転用されたと考えることもできる。この結果、登場から30年近くも使用され、従前の車両と大して変わらない結果となってしまった。

と言っても、209系が房総地区に転用された際、余った車両は廃車されている。細かいことを言えば、使い捨てにされた車両もあるという話になるだろう。これは転用先の事情に合わせ、編成を短くしたのが主な理由だ。京浜東北線時代の10両編成から6両編成や4両編成に短縮されたのだが、この際に京浜東北線で使用されていた6扉車などが製造から11年で廃車されている。

だが、上には上が居るものだ。山手線では、E231系500番代の6扉車は製造から5年で廃車された。ホームドアの導入によって6扉車が4扉車に差し替えられたためである。同じ理由で東急の5000系も6扉車が4扉車に差し替えが行われ、製造から7年で廃車されたものもある。

意外と短命な都営新宿線の電車

短命に終わった私鉄の「走ルンです」は、東急5000系の6扉車だけではない。都営新宿線で使用された東京都交通局10-300R形も短命な車両といえるだろう。

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10-300R形は、先頭車だけを新車として中間車は既存の車両を流用したグループだ。都営新宿線の開業時は6両編成だったのだが、後になって8両編成としたので、8両編成化の際に造られた中間車を集めて先頭車だけ新車とし、車両の有効活用を図ったわけだ。だが、中間車の老朽取替に合わせて先頭車も同時に廃車され、先頭車は製造から10年で廃車されたものがある。

さらに、都営新宿線では2022年までに全部の列車を10両編成とする計画で、すでに10両編成化用の新車が姿を表している。既存の8両編成に中間車を足すと思いきや、10両編成の車両を新車として導入し、既存の8両編成は廃車となる。この結果、10-300R形と同時期に造られた10-300形では、製造から17年程度で廃車される車両が登場する。

こう考えると、本当の「走ルンです」はJR東日本の209系ではなく、実は東京都交通局の10-300形だったという結論になるだろう。JR東日本の6扉車や東急5000系の6扉車が短期間で廃車された時も、当時は「まさか!」と思ったものだ。車両の寿命は時代に翻弄されるものでもあり、本当にわからない。

柴田 東吾 鉄道趣味ライター

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しばた とうご / Tougo Shibata

1974年東京都生まれ。大学の電気工学科を卒業後、信号機器メーカー、鉄道会社勤務等を経て、現在フリー。JR・私鉄路線は一通り踏破したが、2019年に沖縄モノレール「ゆいレール」が延伸して返上、現在は車両研究が主力で、技術・形態・運用・保守・転配・履歴等の研究を行う。『Rail Magazine』(ネコ・パブリッシング)や『鉄道ジャーナル』など、寄稿多数。

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