米国の株価は1月12日に再び急落する懸念がある オミクロン株は低重症率でも影響はかなり深刻

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一度検査によって陽性が確認され、新型コロナに感染していると判断されれば、当然ながらその人は無症状であっても業務に就くことはできなくなる。通常のオフィスワークなど、リモート環境で自宅からでも業務ができる職種はよいが、前述の航空業界をはじめ、医療機関や飲食店、小売業界など、実際に職場に行かなければ話にならない業界にとっては、死活問題だ。

さすがにアメリカの疾病予防管理センター(CDC)も昨年12月27日午後、新型コロナ感染が確認されたものの、無症状の人に対する自己隔離の指針を変更。従来推奨していた10日間から5日間に短縮された。「無症状の感染者にはできるだけ早く職場復帰してもらおう」ということだろうが、それだけ労働力不足の問題に対する政府の危機感が強まっている証拠だ。

インフレが深刻になるのはむしろこれから?

結局、労働力不足の問題の本質は、賃金の上昇圧力が強まりインフレが加速することに尽きる。

経営者は労働力を確保するために、高い賃金を払ってでも人を雇おうとするだろうし、当然ながらそれに伴って以前から働いている従業員の給料も引き上げざるをえない。新規感染者が出れば、従業員への休業手当の支払いを行いつつ、臨時に人を雇うとその分の給料も払うことになるわけで、雇用コストは一気に跳ね上がってしまう。

これまではサプライチェーンの問題がインフレの主因とされてきたが、労働力不足は人が問題だけに、このままだと長期化する恐れもある。

昨年12月10日に発表されたアメリカの11月の消費者物価指数は前年比6.8%と、1982年6月以来39年ぶりの高い伸びを記録したことは周知の通り。1月12日に発表される12月分の消費者物価指数は、前年比7%を超えるとの見方も強まっている。労働力不足の問題が顕著になってきたのは最近であり、物価などへの影響が出てくるのはむしろこれからではないか。もし12日にこうした数値が発表になった場合、市場はどう反応するのか。

もちろん景気への影響にも、十分な注意が必要だ。結局、原材料や部品が不足しても、労働力が不足しても、企業の生産能力はその分落ちてしまうのは避けられないからだ。不足分をカバーしようとコストをかけて雇用を増やすのにも限度がある。このままだと、アメリカ経済にはスタグフレーション(景気が徐々に後退する中でも労働力不足でインフレが進む)懸念が再浮上してくることも、十分にありうる。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

松本 英毅 NY在住コモディティトレーダー

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まつもと えいき / Eiki Matsumoto

1963年生まれ。音楽家活動のあとアメリカでコモディティートレードの専門家として活動。2004年にコメンテーターとしての活動を開始。現在、「よそうかい.com」代表取締役としてプロ投資家を対象に情報発信中。NYを拠点にアメリカ市場を幅広くウォッチ、原油を中心としたコモディティー市場全般に対する造詣が深い。毎日NY市場が開く前に配信されるデイリーストラテジーレポートでは、推奨トレードのシミュレーションが好結果を残しており、2018年にはそれを基にした商品ファンドを立ち上げ、自らも運用に当たる。ツイッター (@yosoukai) のほか、YouTubeチャンネルでも毎日精力的に情報を配信している。

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