マーケットの「マラドーナ現象」に要注意 起こるべくして起きた、株高と円安の揺り戻し

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経済実態面では、日本も消費増税で4月に国内景気が下振れしたあと、8月の大型小売店販売額が前年比でプラスに浮上するなど、脆弱ながらも徐々に回復を見せている。

また米国を含め、極めて緩やかに改善する世界経済の実態からは、内外株価の緩やかな上昇基調が見込める。しかし現実には、行き過ぎた楽観と悲観が交錯し、株価はトレンドの前後で、上振れと下振れを繰り返すだろう。

今後も市場を支配する、「マラドーナ現象」

こうした局面で思い出すのは、前イングランド銀行(英国中央銀行)総裁のマーヴィン・キング氏から聞いた話だ。

キング氏は、極めつけのサッカーファンだ。筆者は以前の訪英時に、1986年のサッカーワールドカップ準々決勝、アルゼンチン対イングランド戦の話を聞いたことがある。そう、伝説となっている、マラドーナの5人抜きのゲームである。

アルゼンチンチームのマラドーナは、ハーフライン手前から独走、ドリブルで5人を抜いて決勝点をあげた。キング氏によると、実はマラドーナはほぼまっすぐ走っていた、という。ではなぜマラドーナは5人も抜けたかというと、イングランドの選手が、マラドーナが右に行くかもしれない、いや左だ、と邪推し、勝手に左右に動いたためだというのだ。

キング氏はこの時、英国の金融政策は方針を曲げず、まっすぐ進んでいるだけなのに、市場が勝手に悲観と楽観に振れている、と語っていた。その市場のブレを「マラドーナ現象」と呼ぼう。

今後の内外株式市場も、「米連銀の利上げは早いのでは、いや、遅いかも」「日本で大規模な経済政策が発動するのでは、いや、しないかも」と、勝手に邪推し、経済実態以上にブレることを何度も繰り返すはずだ。その時、投資家に必要な心構えは、浮かれすぎず落胆もせず、ということに尽きる。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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