「晩婚さん」は、再婚で幸せをつかめるか? 44歳勤務医が語る、20代と40代の結婚の違い

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迷いながらも結婚したら、期待以上に楽しい家庭が築けて子宝にも恵まれてめでたしめでたし、という結末であれば記事としてもまとまりがいい。しかし、現実はそれほどうまくいかない。

「結婚してよかったか? うーん……。家に妻が待っていてくれる生活は独り暮らしよりは安心だと思います。でも、楽ではありませんね」

照れ隠しや謙遜とは思えないほど浮かない表情で新婚生活を語る邦夫さん。聞けば、生活の大筋に関して早くも意見の相違が出てきているようだ。

「妻は開業医の娘なので生活水準が僕とは違うのだな、と感じています。今まで僕が住んでいた2DKの賃貸マンションで子どもと3人で暮らしているのですが、『狭い。早く家を買いたい』とはっきり言われます。でも、勤務医の僕はぜいたくはできません。医療モールに低コストで開業する道もあるのですが、集客や従業員の管理などで余計なストレスをためてしまいそうです。僕には向いていません」

知りすぎるほど自分を知っている男性である。まだ33歳の昌子さんからしてみれば、大胆さが足りないと感じるかもしれない。邦夫さんからすると、妻のほうこそ心配性だ。

「僕と妻は私立育ちなので、子どもはできれば私立に入れてあげたいと思っています。でも、まだ6カ月の今からあれこれ考えるのはいくらなんでも早すぎる。妻は『私立の小学校に入れるのにうちのおカネで足りるのか』なんて心配しています。やれる範囲でやって、ダメならば公立に入れるしかないのに。僕は小さいうちから塾に通わせるようなことにも反対です」

最近は、仕事から帰って来ると「何か面白い話はない?」と昌子さんに聞かれる。口下手な邦夫さんは負担に感じながらも、ネットで芸能ネタなどを探す日々である。

「関西人の口癖なのかもしれませんが、はっきり言ってプレッシャーですね。逆に、『何か面白い話があるの?』と聞くと、『何にもない!』とブスッとした表情をされてしまいます」

ここまで聞いて、この夫婦はほほ笑ましいと感じた。昌子さんは邦夫さんに甘えたいのだ。関西の中流家庭で可愛がられて育ってきて、初めて東京に来て子どもを産み、緊張と孤独に耐えながらも「理想の家庭」を築こうとしている。だからこそ、邦夫さんに多くを求めてしまうのだろう。

邦夫さんは確かにちょっと変わっているし、空気を読んだり話が面白いタイプではない。でも、医師という仕事には真摯に向き合っており、他人をおとしめるようなこともしない。鉄道旅行が好きすぎるところも、見方によってはかわいげだと思う。そして、18年前の手痛い失敗によって「結婚してから意見の相違が出るのは当たり前。話し合って溝を埋めていくしかない」と覚悟を決めている。親子3人が健康的に一緒に暮らすことを最優先にすることを忘れなければ、夫婦の仲は少しずつ心地よいものになっていくに違いない。
 

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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