失われた10年再来を回避するための方策--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授


 金融危機が起こらなくても、日本は人口減少と高齢化で悩むことになっていただろう。さらに言えば、日本の高成長は高水準の投資に支えられていた。だが、生産性向上は、建物や装置への投資によってではなく、最終的にはイノベーションによって達成されるべきものである。その意味でも、日本の投資収益率は遠からず低下することが避けられない状況にあった。

原則的に言えば、金融制度が健全であれば、日本は生産性向上問題にもっと柔軟に対応できただろう。ただ、いずれにせよ、日本の高成長はおそらく急激に落ち込んでいたはずだ。金融危機は経済崩壊を直接引き起こしたのではなく、他の崩壊の要因を拡大させただけである。

穏やかなインフレを2~3年間起こすべき

30年代のアメリカの大恐慌も議論の的になっている。ここでも財政・金融政策の動きが必要以上に注目されている。ニューディール政策は、混乱し、予測しがたい形で国の役割を拡大させ、そのために少なくとも一時的に生産性向上を阻止する役割を果たした。

現在のアメリカは、高税率で規制の多いヨーロッパ型国家へと向かっているように思える。オバマ政権の支持者は、政府は長い間放置されてきた所得の不平等などの問題に取り組んでいると主張するかもしれない。その主張は正しい。ただ、アメリカが今後10年間、日本のような低成長に陥るとすれば、その責任をすべて金融危機に転嫁することはできないだろう。

同様に、最近のヨーロッパで起こった“アイデンティティ危機”は、多くの政策を不確実で予測不可能なものにしてしまった。ヨーロッパが今後10年間、マイナス成長に陥ったとしても、こちらもまた、その原因をすべて金融危機のせいにすることはできない。

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