アリババ躍進を支えた「中国式ネットライフ」

グーグルもLINEも“濾過”する巨大市場

アリババ創業者のジャック・マー氏(写真:AP/アフロ)

この「中国独特の」という言葉は、中国語では「中国特色的」と書かれる。今までは「中国特色的社会主義(中国独特の社会主義)」という文脈で使われることが多かった。しかし、今や中国におけるネット環境は「中国特色的互联网生活(中国独特のネットライフ)」という言葉を冠してもいい時代になった。

最近、中国の人がどうやってネットを使っているのかといえば、検索は基本的に百度(バイドゥ)。中国で百度に接続すると、検索速度のあまりの速さにため息が出る。この半分の速度でもいいから、外国のサイトでも実現してくれれないものだろうか。買い物はアリババの淘宝(タオバオ)。ネット書店も中国版アマゾンなどが普及している。

以前から感覚的に、中国の人は総じてメールの返信が遅かったが、最近はさらにメールをまめに使わなくなった。特に友人との間は騰訊(テンセント)の微信(ウィチャット)で連絡を取り合っている。中国では初対面の人や一緒に仕事をした人にはやたらに「微信のアカウントは持っていないのか」と聞かれる。持っていないと言うとがっかりした顔をされるが、「外国人が普通、持っているはずないじゃないか」と怒りたくなる。

ますます深まる「中国式」

中国人はtwitter代わりとしては微博(ウェイボー)を使ってきたが、微博に対する当局の言論規制が昨年ごろから強まったこともあって、微博は総じて衰退傾向にあり、微信ほどの勢いがない。

もちろんVPN接続などの暗号化ソフトを使えば、禁止された海外のサイトを自由に見ることができる。私も会社のパソコンには入れているので、使うことができるのだが、普段、持ち歩いているマックのパソコンには入っていないので、やはり「中国式ネットライフに」適応せざるをえない。あくまで印象だが、このVPNも、つなぐとすぐに切れることが以前より多くなった。ネットにおける「中国特色的」の色彩はますます強まっている。

ところで筆者は、1997年から1998年にかけて留学先の中国で廈門大学新聞伝播研究所という研究機関にいたとき、「中国のインターネット、開放と規制のはざまで」という論文を書いたことがあった。

当時の中国はインターネットの黎明期だった。すべてダイヤル回線での接続だったので、非常に接続速度が遅かったが、つなげない海外のサイトはなかったように思う。ただ、当時すでにいくつかのインターネット規制のための法律が作られ始めており、1997年はある種の「ネット規制元年」だったと言うこともできた。そんな中、資料も限られていたが、手探りで完成させた論文の最後は、こんなふうに締めくくった。

「中国における伝統的なメディア規制の枠に納まりきらないインターネットという新しいメディアを中国がどのように受け入いれていくかによって、21世紀の中国の未来は占われるに違いない」

それから15年が過ぎた。中国のネットはどう変わったのか。それは私にとっても、世界にとっても、そして中国人にとっても、かなり「予想外」の展開を見せたということは間違いない。

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