日本板硝子、小が大をのむ買収の行方、外国人社長を「監視」《新しい経営の形》
業界内では、退任の真の動機として、08年6月に日本板硝子が企業統治のあり方を変え、委員会設置会社になったことを挙げる人々がいる。表向き小が大をのんだ買収だが、買収後はチェンバース氏以下取締役、従業員の大半がピルキントン出身の外国人という構成になった。日本板硝子のプロパー社員は約20%という少数派になり、資本関係とは裏腹に、いずれ“大が小をのむ”の形へ逆転する事態も予想された。
日本板硝子の委員会設置会社移行について、当時の出原洋三会長は「役員の任命は指名委員会に権限があり、社長はタッチできない」と、その“狙い”を率直に語っている。
チェンバース氏退任後、新社長兼CEO探しの結果、今年6月、クレイグ・ネイラー新社長兼CEOが就任した。ネイラー氏は米国デュポン社出身の米国人。藤本勝司会長は「当社のような国際企業の社長は外国人がふさわしい」と話す。
ピルキントン買収前、日本板硝子の主要な海外拠点はマレーシアに一つある程度で、国際事業を展開する人材の育成も他社の後塵を拝していた。おっとりした社風で、前に出るタイプが少ない、ともいわれる。あるアナリストは、「チェンバース氏の任期途中の“敵前逃亡”を許したことは理解できない。本来は譴責すべきだった」と、そもそもの企業体質の甘さを指摘する。